定額減税 年収2000万円以下の納税者とその扶養家族を対象に、1人当たり所得税3万円、住民税1万円の計4万円を減額する。今年限りの政策としている。納税額が4万円に満たない場合は、減税しきれなかった分を給付する。いずれも6月以降の給与や賞与に適用される。
所得税では普段の徴収額から減額分を控除し、減税しきれなかった分は翌月に繰り越す。住民税は6月の引き去りを行わないため、年税額から減額分を控除した金額を、7月以降の11カ月間で支払うことになる。 政府は1人当たり4万円の可処分所得を増やし、景気浮揚につなげたい考え。その手段として岸田政権が選んだのが、給付のみより仕組みが複雑とされる減税だ。今回の減税でも収入や世帯構成によって、月ごとの減税額や期間でばらつきが生まれた。◆給付の事務を担う自治体は「昨年末から準備」
納税額がもともと少なく減税しきれない人に、追加で給付を行うようにしたため、仕組みはさらに複雑となった。その事務を担う各自治体は頭を悩ませている最中だ。 「複雑な制度に対応するためシステム改修を行ったが準備が大変だ」。横浜市の担当者は追加の給付対象を約45万人と見込み、8月には何とか支給を開始しようとしている。デジタル庁が自治体の給付事務を支援するシステムを開発したが、この担当者は「作業量が多すぎる」とする。 対象者が20万人近くいる東京都江戸川区は全国で最も早く6月19日から追加給付を行う。それでも、担当者は「昨年末から準備を進めてきた」として、作業に相当の時間がかかったことを明かす。自治体の負担については、松本剛明総務相は31日の閣議後会見で「引き続き自治体の声を聞き、必要な対応をしたい」と述べるにとどめた。◆鈴木財務相は「総理のリーダーシップ」というが…
首相が「税収増の還元」として減税を打ち出したのは昨秋だ。政府税制調査会(首相の諮問機関)が昨年6月、通勤手当への課税の検討などを答申に盛り込んだことで「サラリーマン増税」として批判がインターネットを中心に駆け巡り、自らについた増税イメージを払拭したかったとされる。そのため、減税にこだわり、「減税のみ」「減税と給付」「給付」の三つの制度が入り交じった。「定額減税」で手取りの増加を実感できる?(資料写真)
「手取りの増加を実感してもらいたい」として、所得税の減税額を給与明細に明記するよう義務付けたことも、事務負担が増える一部企業の反発を招いた。費用も追加給付だけで約700億円に上る。第一生命経済研究所の星野卓也氏は、「経済対策としての一律支給が目的なら、減税でなく給付の方が効果が高かった」と指摘する。 減税を政権浮揚のアピールにしたかった岸田政権のもくろみは崩れつつある。所得税を所管する鈴木俊一財務相は31日の閣議後会見で「総理のリーダーシップで定額減税の仕組みを決めた。給付よりも減税の形が分かりやすいという判断だった」とし、明確な効果について答えなかった。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。