派閥の裏金事件を受けた自民党の政治資金規正法改正案は、収支報告書のインターネット公表を義務付けるなどのデジタル化が盛り込まれ、岸田文雄首相は「透明性を高める」と主張している。ただ、検索機能のある「データベース化」は見送られ、公表期間は現状のままで、透明性の向上につながるか疑念が持たれている。(近藤統義)

◆ネット公開は紙の報告書をPDF化したもの

岸田文雄首相(千葉一成撮影)

 自民の改正案では、国会議員らが代表を務める「国会議員関係政治団体」に収支報告書のオンライン提出を、総務省や都道府県選管にインターネット公開を、それぞれ義務付ける。  オンライン提出は2010年から努力義務とされているが、総務省が所管する706の国会議員関係政治団体のうち、22年分の収支報告書をオンライン提出したのは1割以下。現状では紙の提出が圧倒的に多い。  総務省や都道府県選管による報告書のネット公開はすでに進んでおり、今年の秋には全都道府県で対応することになるが、紙の報告書を電子化した「PDFファイル」での公開にとどまる。自民案が成立しても、議員ごとの名寄せや寄付者名などをキーワード検索できる機能はなく、政治資金の流れがチェックしやすくなるわけではない。  公開期間も現状と変わらない。現行法は報告書の保存や閲覧を3年分に限っているが、自民案に期間の延長は盛り込まれていない。

◆公開期間を変えないのは「紙の閲覧形式も残すため」

 立憲民主党の熊谷裕人氏は10日の参院政治改革特別委員会で「公開期間は10年くらいに延長すべきだ」と指摘したが、自民案提出者の本田太郎氏は、紙の閲覧形式も残すため、保管能力を理由に延長しなかったと説明。データベース化については「各党で議論し、予算措置や技術的課題の整理が必要だ」と述べただけだった。  NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「収支の詳細がデータとして取得できて、それが公開されなければ、現状と何も変わらない。政治不信が高まることによる民主主義の負のコストを考えれば、一時的に予算がかかってもデータベースの構築は不可欠だ」と指摘する。

 収支報告書の公開 総務省や都道府県選管は毎年11月、政治団体から提出された前年1年分の報告書を公表する。報告書の内容がデータ化され寄付者名などが簡単に調べられる米英などと比べ、検索性は格段に低い。自民党の政治資金規正法改正案では、収支報告書のネット公開に伴い、プライバシー保護のために個人寄付者の住所の公表は市区町村までとなる。ネット公開をする場合は任意だった官報や都道府県公報での報告書の「要旨」公表が廃止される。



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