陸上自衛隊が導入した輸送機オスプレイ1機が19日、暫定配備先の木更津駐屯地(千葉県)に到着し、計画していた17機全ての配備が完了した。しかし、オスプレイを巡っては、アメリカ海軍司令官が安全性に懸念を表明したばかり。昨年11月の屋久島沖での墜落事故以来、詳しい原因の説明がないまま進む運用に、各地で不安と不満の声が高まっている。(宮畑譲)

陸上自衛隊のV22オスプレイ=2024年3月、千葉県木更津市で

◆米海軍の司令官が「運用には戻さない」

 19日に到着したのは、米軍岩国基地(山口県)から移動してきたV22オスプレイ。陸自は長崎県佐世保市にある離島防衛を目的とした「水陸機動団」との一体運用を目的としている。最終的には、部隊と近い佐賀空港に配備する予定。現在、空港に隣接する駐屯地を建設中のため、木更津に2020年から25年7月まで暫定配備されている。  そんな中で完了した木更津への全機配備。だが、1週間前の今月12日、米海軍航空システム司令部のカール・チェビ司令官が米下院委員会の公聴会で「安全に影響する可能性がある問題に十分に対処するまで無制限の飛行運用には戻さない」と証言していた。全面的な任務再開は来年半ば以降になるとの見通しを示し、オスプレイの安全が完全に確保できていないことが浮き彫りとなった。

木原防衛相

 しかし、木原稔防衛相は14日の会見で「(屋久島沖の事故では)特定の部品の不具合が発生したことが原因だと特定された。安全性に問題はない」と説明。それ以上の具体的な言及はなく、「日本国内の日米のオスプレイは安全に運用している。運用停止を求める考えはない」と強調した。陸自の運用については「制限をかけているかどうかは運用保全上の理由から明らかにできない」とした。  こうした政府の説明に、地元は納得していない。

◆屋久島事故の説明もなく木更津で配備完了

 木更津市の市民団体「オスプレイ来るな いらない住民の会」の野中晃さん(84)は「今後、本格的に訓練が始まる。新しい局面に入った。なのに、屋久島の事故の説明がなされているとは言えない。騒音の問題もある。国はもっと丁寧に説明するべきだ」と憤る。  沖縄県の米軍嘉手納基地でも、海軍仕様のCMV22オスプレイの飛行が再開された。10日、県などへの事前連絡なしに運用を始め、その後、基地外への飛行を実施した。県は沖縄防衛局に対し、事故原因が具体的に明らかになるまで飛行停止を求めることを米軍に働きかけるよう要請した。

墜落したオスプレイ捜索の準備をする米軍関係者=2023年11月30日、鹿児島県の屋久島空港で

 嘉手納基地爆音訴訟団の稲福晃事務局長は「屋久島沖で墜落したオスプレイは嘉手納基地に向かっていた。一歩間違えば、基地の周りの人がいる所に落ちていたかもしれない。いつどこで同じことが起きるか分からない。原因をはっきり明らかにしないのに飛んでいること自体が不安」と憤まんやる方ない様子で話す。

◆配備段階に入ってこれだけ事故多発…異常だ

 軍事評論家の前田哲男氏は「開発段階なら分かるが、配備段階に入ってこれだけ事故が起きるのは異常なケースだ」と指摘、それでも運用が進む背景をこう読み解く。  「陸自のオスプレイは、新設の水陸機動団で使われ、最終的な駐屯地も建設が進んでいる。計画全体を動かせないのだろう。沖縄の在日米軍は対中国を念頭に、戦い方の変革期を迎えている。大量の輸送を長距離で行う想定なので、オスプレイを中心に据えざるをえない」  その上で、二重基準にも見える米国の対応にこんな感想を漏らす。  「根底に植民地意識があるのかもしれない。沖縄への一連の対応を見ると、そんな気持ちにもなる」 

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