「政治とカネ」の問題が生煮えのまま通常国会が事実上終わった。物価高に苦しむ国民をよそに、自らの利権は守ろうと躍起な自民党の姿勢には、もはやあきれるしかない。民主主義に大きな汚点を残した国会だったと言わざるを得ない。

第213通常国会が事実上閉幕し、衆院本会議場を後にする議員ら=21日、佐藤哲紀撮影

◆そんな「自由」は許されない

 今国会最大の課題は、政治資金規正法改正だった。  裏金事件で失った信頼回復に向け、岸田文雄首相が「火の玉」の決意で取り組むと語った自民党案は抜け穴だらけ。裏金の温床となった政治資金パーティー券問題は、購入者の公開基準を引き下げることで透明化を図ったつもりだろうが、なぜ5万円までは非公開なのか。国民に納得のいく説明は最後までなかった。  国会議員に月100万円が支給される「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)も、自民と日本維新の会が使途公開などの義務付けで一度は合意したが、ご破算だ。これも党首会談という密室の協議で結論を得ようとした拙速さが招いた結果だと言える。  熟議で成り立つ民主主義がカネによってねじ曲げられかねない制度の本質は、こんな「改革」では変わらない。自民党は「政治活動の自由」をしきりに持ち出すが、民主主義を傷つけるような「自由」が許されないことは論をまたない。

◆問題ある法案、熟議なく成立

 「政治とカネ」では無為な時間が過ぎる中、政府は国民にとって問題が多い法律を次々と成立させた。  改正地方自治法は自治体に対する指示権を拡大したが、非常時に現場から遠い政府が「国民の安全」を守れる指示を本当に出せるのか説得力のある答弁はなかった。重要経済安保情報保護法も機密情報を扱う民間人の個人情報を侵すとの懸念を払う熟議を欠いた。  首相は21日の記者会見で、物価高対策として電気・ガス料金の負担を軽減する補助金再開を表明した。5月の打ち切りが家計を苦しめることは自明の理だったのに、なぜ打ち切ったのか。今回の再開を首相の延命策と受け取る国民は少なくないだろう。民主主義を機能させるためにも、一刻も早い衆院解散を求める。 

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