◆裏金を原資に税控除
この問題がクローズアップされたのは、自民党派閥の裏金事件に絡み、菅家(かんけ)一郎衆院議員が安倍派の「裏金」を原資に、自身が当時代表を務めていた党支部などに寄付し、税控除を受けたことが発覚。菅家氏自身が事実関係を認めたのが発端だ。菅家氏は税控除を「合法」と説明したものの、控除分約148万円を国庫に返納したと説明した。 その後、自民党の平井卓也広報本部長や稲田朋美幹事長代理、福岡資麿(たかまろ)参院政審会長、立憲民主党の吉田統彦(つねひこ)衆院議員などが相次いで税優遇の事実を認めた。平井氏は「おそらく同じことをしている議員はたくさんいる」と明言。吉田氏は「身銭を切った寄付で何ら問題ない」と指摘した。◆個人献金の裾野を広げるはずが「抜け道」に
個人が政党や政党支部に現金を寄付すると、寄付額の約3割が税額控除されるか、または課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれる。この仕組みは「政党等寄付金特別控除制度」に規定されており、政治資金の原資が企業・団体からの献金に集中するなか、個人献金の裾野を広げる狙いがある。 政治家が自身の後援会や資金管理団体に寄付しても、自らに利益が及ぶ寄付になるとして税優遇は受けられない。しかし、自ら代表を務める政党支部への寄付は税優遇の除外対象になっておらず、一部の政治家が「悪用」する抜け道となってきた。◆「国民の疑念招く」識者も批判
改正政治資金規正法は、自民党が提出した法案を一部修正して成立した。自民案提出者の鈴木馨祐氏は参院政治改革特別委員会で、国会議員の税優遇について「決して望ましいものではないと考えている」と答弁。現在の仕組みについて不備があることを事実上認めたといえる。しかし、付則に盛り込んだ「必要な措置」について、秋の臨時国会で対応するよう求められると「(年末の)税制改正と一緒にやっていくとの認識だ」と述べるにとどめた。 東大の谷口将紀教授(現代日本政治論)は税優遇について「派閥パーティーの還流分(の資金)や旧文通費を寄付の原資に税優遇まで受けることは、合法であっても到底妥当とは言えない」と指摘。その上で「身銭を切ったと説明しても、『他に原資があるのではないか』などと、国民が疑念を抱いている」と述べ、制度の見直しが不可欠と主張した。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。