岸田文雄首相が打ち出した電気・ガス料金補助の8月からの再開方針について、自民党内で困惑や批判が広がっている。首相のトップダウンで唐突に決まった上に、暑さが厳しくなる7月にも間に合わないからだ。25日の自民党の会議では「行き当たりばったりだ」などの批判が上がった。自民党総裁選での再選戦略の一環ではないか、との見方も広がっている。

◆自民党内から「電気料金を好きに触るな」

 首相は通常国会会期末の記者会見で8~10月の3カ月間の補助実施を打ち出した。ガソリン代の補助は年末まで継続する。

25日開かれた自民党の政調全体会議。中央はあいさつする渡海政調会長(佐藤哲紀撮影)

 首相の唐突な表明を受けて開かれた25日の自民党政調全体会議では、酷暑対策と位置付けて準備を進めることを確認した。だが、出席者からは「国民から『何をやりたいかわからない』という声が出ている」「電気料金を好きに触るのはやめてほしい」「党内議論をないがしろにしている」などの不満が相次いだ。  会議後、務台俊介衆院議員は記者団に「首相の決断は受け入れることになるが、(補助再開は)選挙対策ではないかという声もあった。党の雰囲気は冷ややかだ」と語った。  首相は定額減税の実施や自民党派閥の解散、政治資金パーティー券購入者の公開基準の「5万円超」への引き下げなど、周囲に十分に相談せず、独断と映る決定を続けてきた。

◆「9月以降もやるという意思表示」

 官邸主導で決めた今回の補助再開も、総裁再選をにらんだアピールとの見方がある。自民中堅は「人気取りにしか見えない」と断じる。国民民主党の玉木雄一郎代表は25日の会見で「6、7月を空白にする意味がわからない。8~10月というのは(党総裁任期の)9月以降も自分がやるという意思表明にしか見えない。国民より自分の今後を思っての政策だ」と酷評した。  電気・ガス料金への補助は、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う燃料価格の高騰を受け2023年1月に始まった。5月使用分(6月請求分)で打ち切られるまで約4兆円の予算が使われた。補助が打ち切られた結果、6月使用分の家庭向け電気料金は、大手電力10社のうち8社のモデル料金が過去最高となった。6月使用分は大手都市ガス4社も全社で値上がりした。  5月の補助打ち切りは、液化天然ガス(LNG)や石炭の輸入価格がウクライナ侵攻前と「同程度に低下した」(林芳正官房長官)ためと説明されていた。(中沢穣、井上峻輔) 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。