◆大逆風の自民は
6月16日に江東区内であった、立候補を予定する4人を集めた討論会。自民党公認で立候補を予定する元職の山崎一輝氏(51)は派閥パーティーの裏金事件を踏まえ、「なぜ自民党が責任をしっかりと取らないのか。(政治資金規正法の改正案で)なぜ一番厳しいものを提案・提示できないのか。これは国民の信頼を取り戻すことなんて到底難しい。国会議員とわれわれ地方議員は目指すものが違う」と、来場者に理解を求める場面もあった。都議選江東区選挙区に出馬を予定している(左から)山崎一輝氏、三戸安弥氏、大嵩崎かおり氏、高橋巧氏=6月16日午後2時10分、東京都江東区で(井上真典撮影)
その翌17日、区内のホテルで山崎氏の決起大会があった。「ともに再出発」とのシールを胸に貼った陣営スタッフが、詰めかけた2000人超の支援者らを会場で案内していた。 同じ自民でも、都議補選足立区の新人候補予定者の決起大会の来場者は約300人。応援に来ていたある都議は「都議の候補者レベルではない。やっぱ特別だ」と圧倒されていた。◆木村、柿沢両家がつまずき…残った山崎家
一輝氏の父親は、江東区長を4期務めた孝明氏(在任中の2023年4月12日、79歳で死去)。来場者は、孝明氏の代から山崎家を支援する人たちだ。 江東区に影響力のある政治勢力は、山崎家のほか木村家と柿沢家。昨年4月の区長選の直前に急逝した孝明氏に代わり、都議を辞職し長男一輝氏が挑んだが、約1万3000票差で木村弥生氏(58)に敗れた。その後、区長選を巡る公選法違反事件が発覚し、立件された木村氏や柿沢未途元衆院議員(53)は公民権停止となった。 木村、柿沢の両家がつまずき、残った山崎家。しかし、安泰ではなかった。事件で、自民党の3区議が公選法違反(被買収)罪で在宅起訴され、離党。19年12月以降、地元では自民党の国会議員や重鎮だった元区議会議長が汚職事件で逮捕されるなど、自民への風当たりは強い。◆決起大会に自民国会議員を招かず
自民党は4月の衆院東京15区補選で、地元から候補者を出せない状況にまで追い込まれた。そこで、党江東総支部で「再出発」と決めたのが、今回の都議補選だ。 「今回の都議補選が駄目だったら、一輝は終わる」。複数の自民党関係者はこの選挙を「背水の陣」とみる。決起大会にいたある後援会幹部は「来場者は多いが、これがどこまで票に結びつくのか」と複雑な心境をのぞかせた。 会場には、「最大のピンチ!かつてない逆風!」との垂れ幕を掲げた。選挙に悪影響が出ることを懸念し、現職の国会議員は招かなかった。支援者に向けて、都議補選の各立候補予定者の特徴を紹介し、選挙情勢を説明する場面を設けると言ったかつてない光景も見られた。「厳しい情勢を支援者と共有するためだった」と同党の区議は振り返る。 都議時代には、党内で反小池(百合子都知事)の先頭に立っていた一輝氏だが、「行政の継続性の観点では、小池知事しかいない」と支援する姿勢を鮮明にした。◆共産「エース級」、無所属「トップ当選」、木村家は孫を擁立
江東区では、共産党公認候補で「エース級」(自民党区議)と目されている元会派幹事長大嵩崎(おおつき)かおり氏(57)も出馬を予定。「江東区では自民党政治家による汚職や不正が相次いでいる。なんとしても利権政治にまみれた今の都政を変えていきたい。物価高騰から若者、高齢者の暮らし、中小企業を守るために全力で頑張る」と訴えている。 また、不正に厳しい姿勢で臨み、昨年の区議選でトップ当選を果たした三戸安弥氏(35)=昨年12月の区長選出馬のため辞職=も出馬する。会見で、「元区長の不正をしっかりと(議会で)追及してきた。これ以上区民の皆さまの生活をないがしろにする、特定の国政政局の争いになるような選挙は終わりにしたい」と強調した。 さらに、木村勉元衆院議員(84)=木村弥生元区長の父=の孫で、若さを前面に出す法政大3年の高橋巧氏(25)も立候補を表明。会見で「若者は政治に無関心。自分が架け橋となって、これからの世代の閉塞感を打破しなければいけない。諦めではなく、希望を持てる社会にしたい」と述べた。◆立候補予定者(五十音順)
大嵩崎かおり(おおつき・かおり)氏 区議・共産
三戸安弥(さんのへ・あや)氏 元区議・無所属
高橋巧(たかはし・たくみ)氏 法政大3年・無所属
山崎一輝(やまざき・いっき)氏 元都議・自民
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