東京都知事選(7月7日投開票)を巡り、選挙掲示板に同一のポスターが多数張られる事態が物議を醸している。選挙と無関係の内容も多く、有権者からは「常識外れだ」との声も上がる。選挙活動の良識が問われている。
大量の同一デザインのポスターが目を引く東京都庁前の掲示板。訪れた都内の70代女性は「選挙をばかにしている。常識外れだ」と憤る。日野市の30代男性は「違法と言い切れないが、まじめな選挙なのに投票意識がうせる」と不快感をにじませた。
24人が出馬した政治団体「NHKから国民を守る党」は、1口2万5000円の寄付と引き換えに、候補者に割り当てられた掲示板の枠を譲ると表明している。寄付者は自身が作成したポスターを1カ所に24枚張ることができ、これまで約1050カ所分が「売却」された。
これを受け、都内各所の掲示板には、有料サイトに誘導するQRコードが掲載されたものなど、候補者と無関係なポスターが多数張られた。中には風俗店を宣伝する内容もあり、警視庁は22日、風営法に抵触するとして、立花孝志党首に警告した。
同団体以外にも問題視される事例はある。警視庁は20日、「表現の自由」を訴え、ほぼ裸の女性のポスターを掲示した諸派の男性候補に対しても、都迷惑防止条例違反の疑いで警告。同庁幹部は「何でもありではないという示しはついた」と話す。
同団体は警告を受けたポスターを撤去したが、立花党首は取材に対し「無関係のポスターを張ることについて公選法上の定めはない。掲示板をなくすための問題提起だ」と主張。収益目的との指摘には「選挙とはいえ、ビジネスとして金を稼ぐ知恵を出せる人が政治家にふさわしい」と持論を展開した。
都選管には告示日の翌日の21日までに、「なぜ同一ポスターが大量に張られているのか」などの問い合わせが1200件以上、殺到した。
法政大大学院の白鳥浩教授(政治学)は「ポスターに何を掲示するかは表現の自由の範囲」と語る。一方で、「選挙は行政長などを選ぶ政治的な機能しか想定していない。選挙とビジネスは切り分けるべきだ」とも指摘。選挙掲示板の趣旨の説明徹底など、都選管や総務省による踏み込んだ対応を求めた。
同一のポスターが大量に並んだ選挙掲示板=26日、東京都江東区(一部、画像処理してあります)
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