コンソーシアムの設立シンポジウムで基調講演する菅前首相(4日、大阪市中央区)

日本経済新聞社大阪本社は4日、南大阪地域を中心に関西経済の活性化を目指す産学官の枠組み「南大阪REBORN(リボーン)コンソーシアム」の設立シンポジウムを大阪市内のホテルで開いた。菅義偉前首相が基調講演に臨み「南大阪は多くのポテンシャルを秘めた、いわば関西で残されたラストフロンティアだ」と述べた。

コンソーシアムは日本経済新聞社が2024年に大阪発刊100周年を迎えるのに合わせて発足した。観光振興やICT(情報通信技術)教育など4つの分科会を立ち上げて具体策を検討する。25年国際博覧会(大阪・関西万博)を機に地域の活力を高める。4日の会合には堺市など南大阪に拠点を置く企業の関係者ら、およそ130人が参加した。

菅氏は基調講演で、宿泊施設の整備や公共交通網の再構築を通じて訪日外国人客(インバウンド)を呼び込み、滞在させる重要性を訴えた。南大阪の現状について、公共交通網の脆弱さや府内でも高い人口減少率が課題だとの認識を示した。

4日のシンポジウムには南大阪に拠点を持つ企業の関係者らが参加した(講演する菅前首相、大阪市中央区)

自動運転やオンデマンドのバスを活用して「官民が連携し、地域交通体系を適正化することが大切だ」と話した。「かねて強く導入を主張してきたライドシェアが4月から開始されたことは一つの節目だ」とも述べた。

分科会の座長は、各分野に専門性を持つ識者らが就任した。

「スタートアップ・国際交流」は大阪大の佐久間洋司特任研究員、「産学官連携」は大阪公立大スタートアップ創出・支援センターの吉国聖乃副センター長、「観光振興・外国人定住」は京都精華大のウスビ・サコ前学長、「ICT先端教育」は早稲田摂陵高校の米田謙三教諭がそれぞれ座長に就いた。

講演する大阪大学特任研究員の佐久間氏(4日、大阪市中央区)

佐久間氏は南大阪の地域に思い入れのある投資家などの協力を仰ぎ、起業家のコミュニティーを形成して投資を呼び込む重要性を訴えた。生成AI(人工知能)の活用を通じたスタートアップの育成に向けて「学ぶ場が必要だ」とも述べ、地域に拠点を置く大学との連携の必要性を指摘した。

講演する大阪公立大学の吉国氏(4日、大阪市中央区)

吉国氏は南大阪には中小企業が多く立地することに触れて「新しい産学官連携モデルを考えたい。日本一産学官連携が身近な場所を目指す」と呼びかけた。

講演する京都精華大学のサコ氏(4日、大阪市中央区)

サコ氏は観光の窓口を関西国際空港につくる案や南大阪で博物館や美術館の整備を進める構想に言及した。「やってくる外国人が社会の中に入ることで社会を新しくすることが重要だ」と指摘した。

講演する早稲田摂綾高校の米田氏(4日、大阪市中央区)

米田氏は堺市と連携して、工学や数学、芸術などを横断的に学ぶSTEAM教育に取り組む計画を説明した。「主体は生徒・児童・子どもだ。一人ひとりが自ら学びを深めて広げていくことにつなげていきたい」と話した。

分科会は南大阪エリアに拠点を置く企業や大学の関係者らで構成する。堺市や大阪商工会議所、堺商工会議所なども協力団体として加わる。月1回程度のペースで議論を重ね、26年まで毎年12月には総括のシンポジウムを開く。

シンポジウムでは大阪商工会議所の鳥井信吾会頭があいさつした(4日、大阪市中央区)

南大阪には古くから貿易都市として栄えた堺市があり、豊かな伝統や歴史を持つ地域だ。9月に開業30年を迎える関西国際空港も所在する。万博を契機に、こうした地域の資源を生かしながら経済活性化に向けた機運を高める。

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