激戦となった東京都知事選は7日に投開票され、現職の小池百合子氏(71)が、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)、前参院議員の蓮舫氏(56)らを破って3選を果たした。小池氏の強さの理由、石丸氏と蓮舫氏の戦いぶりはどうだったのか。  担当記者の座談会を2回に分けて紹介する。1回目は立候補の経緯や選挙戦の現場について。(都知事選取材班)

東京都議会の本会議を終えて記者団の取材に応じる小池百合子知事=6月12日午後、都議会で

◆蓮舫氏との「一騎打ち」を巧みに避けた小池氏

 ―小池氏は告示の8日前の出馬表明だった  A 表明時期は当初、5月29日の都議会開会日で調整していたとされる。しかし、27日に蓮舫氏が出馬を正式に表明すると、小池氏は6月12日の閉会日に後ずれさせた。蓮舫氏との「一騎打ち」と映ることを巧みに避けたのではないかと感じた。

東京都知事選への立候補を表明し、記者会見する立憲民主党の蓮舫参議院議員=5月27日午後、東京・永田町で

 ―蓮舫氏が名乗りを上げた舞台裏は   B 立候補を真剣に検討し始めたのは、表明のわずか数日前。立憲民主党が4月の衆院3補欠選挙など各種選挙で連勝し、出馬表明前日の静岡県知事選と東京都議補選(目黒選挙区)でも立民が推す候補が勝利した。勢いに乗ったまま、都知事選になだれ込む戦略を描いていた。  ―選挙戦はどうだった A 小池氏の人気を改めて感じたのは、八丈島で開いた街頭演説。人口約7000人の島で、子どもから大人まで300人以上が集まったのには驚いた。ほかの演説も応援弁士なしの本人のみというケースも多く、シンプルで聞きやすかった。 C 石丸氏は、多い時で1日20回近く、精力的に街頭演説を展開した。自身の動画や写真を友人のラインに送信するよう聴衆に直接呼びかけ、インターネットとリアルを巧みに連動させた選挙活動が躍進につながったと思えた。

写真撮影に応じる石丸伸二氏=6月22日、東京都台東区浅草で(鈴木里奈撮影)

D 蓮舫氏の街頭演説は連日盛り上がり、主要駅前の歩道や広場が聴衆で埋め尽くされた。こぶしを握り締め次々と政策を訴える姿も格好良く、会場はどこも盛り上がった。

◆「投票率が高くなると、厳しい選挙」蓮舫氏陣営の不安的中

 ―小池氏支援の自民党の動きは E 選挙はがきやビラの配布など裏方に徹した。公明党も含め、国会・地方議員が応援演説に入ることはなかった。小池氏の演説会場で複数の自民都議を見かけたが、聴衆に紛れる形で目立たないようにしていたのが印象的だった。  ―蓮舫氏陣営は対照的に立憲民主、共産党の支援を前面に押し出した D 情勢調査で劣勢が伝わると、陣営幹部は「党の支援者だけで盛り上がり、無党派層が置いてけぼりになっている。投票率が高くなると、厳しい選挙になる」と指摘していたが、不安が的中した。

選挙カーの上で演説する田母神俊雄氏=6月22日、東京・表参道駅前で

 ―他候補の戦いぶりは E 元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)は、タレントのデヴィ・スカルノさんら親交のある著名人も応援に駆けつけた。新宿・歌舞伎町でホステスの女性たちに演説会を開くなど、独自の手法で若者への浸透にも努めていた。 F 人工知能(AI)エンジニアの安野貴博氏(33)は政治経験ゼロながら15万票を集めた。告示後でも支持者の声を公約に取り入れる取り組みは新鮮で、新たな民主主義の姿に期待が集まった。 G タレントの清水国明氏(73)は災害対策を訴えた。選挙戦後半は、能登半島に足を運んで被災地の現状を訴えることに方針転換していた。

蒲田駅前で支持を訴える小池百合子氏=6月30日、東京・蒲田駅前で(布藤哲矢撮影)

 ―主要候補の今後は H 小池氏は、1期目前半は良くも悪くも自民と対立し、議会との間に緊張感があった。ところが3期目に入る現在は、自民との対立関係がほぼ解消され力が強くなっている。立民や共産などに対し露骨に突き放すような態度もみられるが、議会に謙虚に向き合ってほしい。 D 蓮舫氏は選挙中、自宅からのインスタグラムの動画配信で愛犬を抱きながら部屋着姿で視聴者の質問に答えるなど、意外な横顔も見せていた。今後の政治活動は未定というが、有権者に親しみやすさをよりアピールできるようになれば、政治家としての幅も広がるのではないか。 C 石丸氏は7日夜、今後の国政転出の可能性について問われ「選択肢としては当然考えます」と答え、衆院広島1区からの出馬の可能性に言及した。「石丸新党」結党の可能性も含め、「全ての選択肢はテーブルに載っている」とも述べ、政治的野心を隠そうとしなかった。選挙期間中には自身が「政治屋の一掃」を掲げて支持を得ていただけに、疑問が残るやりとりだった。 

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