東京都知事選の選挙ポスターや政見放送をめぐるトラブルを受け、公職選挙法の改正を含めてルールや運用のあり方を見直すべきだとの声が、与野党で上がる。ただ、過剰な規制を懸念する慎重論もあり、法改正に直結するかは不透明だ。
- 「荒れる選挙」は冷笑主義の帰結か 底が抜けた公費運営の理念
「ポスターの掲示板をビジネスに使ったり、政見放送で非常識な振る舞いがあったりと想定外の事態が起きた。秋の臨時国会で法改正の議論ができるよう検討を進めたい」。公明党の石井啓一幹事長は5日の会見でそう述べ、近日中に党内で検討チームを立ち上げるとの考えを示した。
自民党の茂木敏充幹事長も「公選法の見直しも含めて対応策を検討していく必要がある」と問題提起。日本維新の会の藤田文武幹事長は「前時代的な公選法の仕組みについて問題意識を持っている」と語っている。国民民主党の玉木雄一郎代表は「次の臨時国会までには考え方をまとめたい」とした。
問われる選挙のあり方、「自由と逆行」の指摘も
慎重論もある。
- 【解説】そもそも選挙の規制って?
立憲民主党の岡田克也幹事長は法改正の必要性は認めつつ、「選挙の自由は、非常に重要な価値。公権力が介入するようなことは極力避けなければいけない」として丁寧な議論を求めた。
何らかの規制や対策が必要だとの声が上がるものの、具体策は今のところないのが現状だ。
国民民主の玉木代表はポスターの電子掲示板化を提案するが、予算面の課題がありそうだ。
共産党の田村智子委員長は「供託金を引き上げてもこういう事態が起きる。規制を強めることに効果があるのか議論が必要」と話す。
公職選挙法に詳しい只野雅人・一橋大教授は「既存の選挙や民主主義を侮辱する言説が相次いでいるのは日本だけではない。政治への信頼低下が、今回のような行為が面白がられる余地を生んでいる。当面の対処として『穴』をふさぐ検討は必要だろう。ただ、時代に合わせた選挙の自由化とは逆行してしまう」と指摘する。
「選挙制度のありかたが正面から問われた今こそ、最低限の平等性にどれだけ配慮し、どれだけ自由にしていくか、腰を据えて議論する時です」(松井望美)
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