<政治とカネ考・残された課題>  6月19日に成立した改正政治資金規正法。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で政治家の自浄作用が問われたが、法改正は抜本改革には程遠く、抜け穴が目立つ。国会閉会後、先送りされた検討項目を議論する動きが鈍い中、積み残しにされた課題を掘り下げる。

◆国会審議で早期設置を求める声が相次いだが…

 政治資金の透明性を確保する上で鍵を握るのが、改正政治資金規正法の付則に盛り込まれた第三者機関の設置だ。通常国会の審議では有識者からも早期の設置を求める意見が相次いだ。  だが、第三者機関がいつ、どのような形で設けられるかはっきりしない。付則では役割として「政策活動費の監査」と例示されているが「検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とされ、具体性を欠いている。  国内には政治資金を監督する独立した機関がない。研修を受けた「登録政治資金監査人」が国会議員関係政治団体の政治資金収支報告書を監査する制度はあるが、支出内容が適正かどうかはチェックされない。不記載など法律違反への対応は、実質的には捜査当局に委ねられている。

◆米国では独立した監督機関が質問や調査、民事罰も

 米国には独立した監督機関があり、収支報告書に問題を見つけた場合は文書での質問や現地調査を実施。法令違反があれば民事罰を科すことも可能だ。  与野党からはこうした幅広い権限を持った組織を求める声が出ている。政策提言機能を持たせるべきだという意見もある。どこまで強い権能を持たせるか、立法府と行政府のどちらに設置するか、独立性をどう確保するかなど論点は多い。

◆公明は党内で検討開始、自民は…

 公明党は改正法の成立を受け、党内で検討を始めているが、派閥の政治資金パーティー裏金事件を起こした自民党には目立った動きは見られない。岸田文雄首相は、改正法が施行される2026年1月を念頭に「可能な限り早期に設置できるように議論する」と述べるにとどめている。  政治家が自らを監督する第三者機関を、どれだけ実効性ある中身にし、スピード感を持って設置できるか。与野党の本気度が問われている。(井上峻輔) 

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