◆女性活躍推進法の改正案を来年にも提出
女性活躍推進法では2022年7月から、男女の賃金格差の公表を義務付けた。同省によると、300人超の企業約1万7800社が対象だったが、約5万700社まで広がることになる。報告書ではさらに、管理職に占める女性比率の初の公表義務化も明記した。対象企業の規模は今後調整する。 9月以降に労使代表などによる労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で議論し、来年の通常国会への同法改正案提出を目指す。 日本の男女間賃金格差は、男性の賃金水準を100%としたときの女性の水準は74.8%(23年)にとどまる。9割以上のスウェーデンや8割以上の米国やドイツ、フランスなどに後れをとり、先進7カ国(G7)で最大の格差だ。
◆欧米諸国との差は開くばかり
岸田政権は4月、格差是正に向けたプロジェクトチーム(PT)を官邸に設置。比較的格差の大きい5つの産業(金融・保険業、食品製造業、小売業、電機・精密業、航空運輸業)を分析し、共通の課題に▽男女の管理職登用の差
▽男女の勤続年数の差
▽管理職や本人の意識、職場の風土の問題
の3点を挙げた。 日本の女性管理職比率は約13%(22年)で、男女の賃金格差と同様、30~40%台の欧米主要国との差が開いている。
女性活躍推進法 女性の力を「わが国最大の潜在力」ととらえた安倍政権が職業上の女性活躍推進を目的に提出した法案で、2015年に成立した。女性の採用や昇進の機会拡大を目指して、企業や国、自治体に行動計画の策定・公表を義務付けた。集中的な取り組みを求めるため、25年度までの時限立法とした。
◇ ◇◆記者解説 取り組む企業へこまやかな支援策を
男女間の賃金格差をめぐり、厚生労働省が公表を義務づける対象企業を広げる方針を決めたのは、依然として格差が解消される機運が高まらないためだ。政府は新たに対象に加わる企業の意識の高まりに期待するが、企業規模が小さいほど実行には時間がかかる。単なる義務付けで終わらせず、企業が格差是正を進めやすくするための細やかな支援策も同時に求められる。 格差が生じている要因は多岐にわたる。政府のPTが主な要因として掲げた「男女の管理職登用の差」を例に挙げれば、その背景には、出産・育児などによるキャリアの中断や家事・育児・介護などの無償労働の女性への偏り、家事などとの両立が不可能な長時間労働などが折り重なる。 社会保険料の負担を避けるために、自ら働く時間を抑える「年収の壁」も要因のひとつだ。総務省の調査をもとにしたデータでは、同じ大卒でも年収200万円未満の男性が2%なのに対し、女性は4割を占めた。 若い女性が地方から大都市圏に流出していることも賃金格差と無関係ではない。政府は目指すべき社会を明確にした上で、実効性のある対策をさらに具体化していく必要がある。(坂田奈央) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。