自民党は5日、岸田文雄首相の党総裁任期満了(9月30日)に伴う総裁選挙管理委員会の初会合を党本部で開き、投票日などの日程やルールの議論を始めた。従来の総裁選は多額の選挙費用や派閥主導の多数派工作が批判を浴びてきた。今回は脱派閥の徹底に加え、裏金事件を踏まえ「カネのかからない選挙」を打ち出す方針。だが、失墜した国民からの信頼を取り戻せるかは不透明だ。(井上峻輔)

自民党の総裁選挙管理委員会の初会合であいさつする逢沢一郎委員長=5日、東京・永田町の自民党本部(佐藤哲紀撮影)

◆クリーンとは程遠い実情に…

 「党の厳しい状況を真剣に受け止め、自民党を変えるという決意にふさわしい公平公正な総裁選を進めたい」。選挙管理委員長に就任した逢沢一郎衆院議員は会合冒頭に力説した。  過去の総裁選は各陣営が大金を投入するのが常で、資金力がなければ立候補は難しかった。派閥の力関係で結果が投票前に決まってしまうこともある。クリーンとは程遠い実情に、党内からも懸念の声が相次いでいた。  逢沢氏は会合後、記者団に「資金が潤沢かどうかで差がつくことを国民がどう見るかを慎重に考え、必要以上にカネのかからない選挙にしたい」と強調。多額の費用がかかる政策パンフレットの郵送に一定のルールを定める案も示した。

◆裏金事件、地方組織は不信感

 一方、会合では「国会議員票」と「党員票」の配分などは現行の規定で行うことを確認した。  現行規定では、1回目の投票は国会議員票と党員票を同数に配分し、合計票数で争われる。だが、決選投票にもつれた場合は国会議員票の比重が高まる。そのため過去の選挙では、1回目の投票で1位だった候補が決選投票で逆転を許し、落選した例もある。  裏金事件で国会議員への不信感を強める地方組織からは、党員票の比重拡大を求める声も出ていた。だが「今から大きく規定を変えるわけにはいかない」(逢沢氏)と判断。結果的に今回も国会議員票が勝敗の鍵を握る。  多くの派閥が解散を決めたとはいえ、派閥の元幹部たちは総裁選に向けた協議を続けている。ある中堅議員は「今回は誰が総裁になるかよりもどう選ばれるかが大事だ。派閥の力で決まれば国民はすぐに見破る」とくぎを刺す。  総裁選の日程は20日の次回会合で決める。政策議論を深めるため、選挙期間を前回の12日間より長くするべきだとの意見もある。  総裁選を巡っては、現段階で正式に立候補を表明した議員はおらず、岸田首相は直接の言及を避けたままだ。 

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