北陸新幹線の敦賀―新大阪間の延伸で、国土交通省は7日、物価上昇を最大限考慮した場合に建設費が最大5.3兆円に膨らむとの試算をまとめ、与党に提示した。資材高に加え、人件費の上昇などが費用を押し上げる。途中の京都駅の候補地として3案を示した。工期は従来の15年から最長で28年に延びるとした。

建設費の総額と工期は京都駅をどこに設置するかによって異なる。①JR京都駅を東西に通る②同駅を南北に通る③JR桂川駅付近に新設する――という3案をあげた。

2016年度に試算した際は福井県の敦賀駅を出て同県小浜市や京都市を通り、新大阪駅につながるルートで、建設費を総額およそ2.1兆円、工期を15年としていた。

敦賀―新大阪間の工期は従来の15年から最長で28年に延びるとした

国交省は3案の詳細について、東西案が総額3.7兆円で工期28年、南北案が3.9兆円で25年、桂川案が3.4兆円で26年と示した。これらは22年度までの資材高などを考慮したもので、23年度以降に毎年度2%程度の物価上昇が続けば、さらに費用が上振れすると説明した。

この場合は東西案の建設費総額が5.3兆円、南北案が5.2兆円、桂川案が4.8兆円にまで増えるとはじいた。与党が7日に開いた整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)の会合で、国交省が説明した。

整備新幹線を着工する際の基本的な条件として、国交省は投資に見合う費用対効果の目安を「1」としている。「小浜・京都ルート」の費用対効果は16年度の試算で1.1だった。新たな試算に関して、今回は費用対効果の提示を見送った。

北陸新幹線の新大阪延伸を巡っては、与党で小浜・京都ルートと別に滋賀県の米原駅を通る「米原ルート」などを検討していた。小浜・京都ルートは17年3月にまとまった。

7月に開いた北陸新幹線建設促進石川県民会議の総会では、米原ルートの再検討を政府に要望する案を決議した。小浜・京都ルートに比べて距離が短く、大規模トンネルといった難工事が想定されず、より安価で短期に完工できると主張している。

7日の会合では現行ルートで25年度中の着工をめざすことを確認した。委員長を務める自民党の西田昌司参院議員は記者団に「1日も早くこのルートで完成する方向で議論したい」と述べた。

運行を担うJR西日本の長谷川一明社長も7月の記者会見で、改めて小浜・京都ルートが望ましいとの考えを強調した。同月に発生した東海道新幹線の運転見合わせの影響も念頭に「首都圏と関西を複数の大量輸送機関で結ぶことはわが国の経済全体の観点で重要だ」と語った。

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