日米首脳会談受け 自衛隊統合幕僚長が会見
アメリカを訪れている岸田総理大臣はバイデン大統領と会談し、自衛隊とアメリカ軍の指揮・統制の向上など、防衛協力を深めるとともに、経済安全保障や宇宙など幅広い分野での連携強化を確認しました。
これについて、吉田圭秀統合幕僚長は11日の記者会見で、「アメリカ側の指揮体制がどのようになるのかは現時点で決まっていないと認識しているが、互いの指揮・統制の調整要領や連携強化の具体的な方向性は現場レベルでもしっかり協議していきたい」と述べました。
また、指揮・統制の向上によってアメリカ軍と攻撃目標の情報共有が進むのか記者から問われたのに対し、「情報収集で協力したとしても、目標の選定から攻撃までのターゲティングはそれぞれ独立した指揮系統に基づいて主体的に判断して行う。ターゲティングは自衛隊の判断として主体的にやることになる」と述べ、アメリカ軍の指揮下に入ることはないという認識を示しました。
“両部隊の指揮・統制を向上” 今後の焦点は
日米共同声明では、自衛隊とアメリカ軍の連携をより円滑にするため、それぞれの部隊の指揮・統制を向上させることが盛り込まれました。
日本の防衛に関する自衛隊とアメリカ軍の調整は、現在は統合幕僚監部とハワイに司令部があるインド太平洋軍との間で行われています。
東京の横田基地には在日アメリカ軍の司令部がありますが、担っているのは日本にある基地の管理などで、部隊の指揮権はありません。
防衛省関係者は、「ハワイにいる相手との調整は、時差も加味した上で行う必要がある。物理的な距離があるために顔を合わせる頻度もどうしても限られてくる」と話しています。
日米共同声明ではアメリカ軍の指揮・統制の向上に向けた具体的な内容は明らかにされていませんが、バイデン政権で安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は、日米首脳会談を前に行われたNHKのインタビューに対し、「日本におけるアメリカの作戦指揮の機能を高める」と述べていて、在日アメリカ軍の指揮統制の機能強化が焦点のひとつとみられています。
一方、日本は、来年3月までに陸海空自衛隊の部隊を一元的に指揮する常設の「統合司令部」を設置することが決まっています。
現在は、自衛隊制服組トップの統合幕僚長が防衛大臣を補佐するとともに、部隊を実質的に指揮する役割も担っていますが、「統合司令部」の設置後は陸海空自衛隊トップの各幕僚長と同格の統合司令官が部隊を指揮し、アメリカ軍との作戦の調整にもあたります。
指揮・統制の向上をめぐっては、政府が「自衛隊がアメリカ軍の指揮・統制下に入ることはない」と説明しているのに対し、野党からは「自衛隊がアメリカ軍の指揮下に組み込まれる」などの懸念が出ています。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。