立憲民主党の野田佳彦元首相は29日、9月の党代表選に立候補すると表明した。千葉県習志野市で記者団に「政権を取り戻すための道筋をつける。役割を果たしたい」と述べた。政治資金問題で自民党から離れた保守層を取り込み、次期衆院選で政権交代をめざす道筋を描く。
今回の立民代表選で出馬表明をしたのは枝野幸男前代表に続いて2人目となった。9月5日にも記者会見で政策などを発表する見込みだ。
地元のJR津田沼駅北口で「再び首相を目指す決意を固めた」と訴えた。1986年10月1日に千葉県議をめざして初めて街頭に立ったところだという。
出馬を決断した理由について「国家を背負う覚悟と力量が問われる。刷新を実現するために一定経験が必要ではないかと思い始めた」と説明した。野田氏は党内から出馬要請を受けても「昔の名前で出ています、はダメだ」と慎重姿勢をみせていた。
立民の党内には世代交代が必要だとの声がある。一方で民主党政権の中心を担った議員でない層で「党の顔」になる衆目一致する有力議員がいないとの指摘もある。
野田氏は次期衆院選で「自民党を単独過半数割れに追い込む」との目標を掲げた。
出馬表明後には連合の芳野友子会長と会談し、与党でなく自民党と表現した理由を説明した。「選挙結果によって自民党と公明党の関係が常に緊密だとは限らない」との見解を示した。連合は「与党を過半数割れに追い込む」との方針をとる。
野田氏は芳野氏との会談後、記者団に「本来は国民民主党と合流をめざさなければいけない」と話した。「衆院選が近いかもしれないので急にはいかない」とも指摘し、まずは選挙区調整を働きかける意向を示した。
野党との選挙協力を巡っては共産党との関係も論点になる。野田氏は出馬表明後、記者団に連立政権を組む相手にはならないと強調した。「対話のできる関係は必要だ」との認識を示しつつ「同じ政権は担えない」と言明した。
中道から「穏健な保守層」までの受け皿を狙う考えを表明した。「自民党に失望した保守層の心をつかむやり方が必要になってくる」と分析した。
経済政策に関し「一番やりたいのは分厚い中間層の復活だ」と説いた。「中間層からこぼれ落ちてきている人に光を当てる経済・財政政策を考えていく」と唱えた。
野田氏が首相だった当時も、分厚い中間層の復活を政権の政策の柱に据えた。「未達で終わり、安倍、菅、岸田政権と続いて格差は広がった」と振り返った。
消費税は「安易に減税すべきではない。今は現状を維持するのが基本だ」と語った。「将来はベーシックサービスを実現し、財源には消費税が位置づけられるべきだ」と説いた。
「先頭に立って政治改革を実現したい」と力を込めた。将来の国会議員の定数削減や世襲の禁止の必要性に触れた。
政治資金問題への自民党の対応を批判した。通常国会で与党などの賛成多数で成立した改正政治資金規正法の内容が不十分だと問題視した。「賛成した人たちが本当に政治改革できるわけはなく、深い反省もない」と指摘した。
自民党総裁選で収支報告書への不記載があった議員の選挙での非公認や不記載額の返納といった案が浮かぶ。野田氏は「今ごろになって何を言っているのか」と断じた。
野田氏は2011年の民主党代表選の際、両院議員総会で自身を「ドジョウ」に例え「泥臭く政治を前進させる」と誓った。29日も「『改革もどき』を言う世襲の多い金魚たちに立ち向かっていくドジョウでありたい」と決意を示した。
8月29日は野田氏が制した11年の民主党代表選の投開票と同じ日付でもある。これについて「たまたま」だと話しつつ「天命だ」と発言した。
今回の立民代表選は枝野、野田両氏のほかに泉健太代表も再選をめざす。江田憲司、馬淵澄夫、吉田晴美の各氏も立候補に意欲を示す。
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