政府の2025年度予算編成で概算要求総額は、117兆円を超える見通しとなった。各省庁からは、現時点で具体額を示さない「事項要求」の政策が今回も目立ち、実質的な総額はさらに膨らみかねない。一方、日銀の利上げに伴い借金返済に充てる「国債費」の要求額も2024年度当初予算比で7%増えており、支出の抑制が働かない中で厳しい財政運営が続く。(石井紀代美)

◆「アベノミクス以降の政策を総括するべきだ」と木内登英氏

財務省

 事項要求は予算額の見通しが付かない場合、項目だけを挙げる仕組み。新型コロナウイルス禍以降の予算編成では事項要求が急増し、2025年度編成では賃上げと物価高関連の施策にも事項要求を認めた。  予算を圧迫しそうなのは、各省庁の事業だけではない。財務省が要求する国債費は、利払いだけで12%以上増の10兆9000億円を見込み、元本の返済分を含めると計28兆9000億円となっている。日銀の利上げによって、財務省は市場の想定金利を0.2ポイント高い2.1%に設定したからだ。  野村総研の木内登英氏は今回の概算要求について「財政が悪化し、歳出抑制しなければいけない局面だが、物価高の影響で税収が増えることなどを見越し、逆に規律が緩んだ」とみる。  普通国債の残高は2024年度当初予算ベースで1105兆円。対国内総生産(GDP)比では250%を超え、「海外諸国と比べても突出して高い」(財務官僚)のが現状だ。  日銀の利上げが今後も続けば、さらに国債費が増え、財政の余裕もどんどんなくなる。大災害や急速な景気悪化時に必要な政策の実行が難しくなるため、木内氏は「日銀が国債を買い支えて財政支出を増やす『アベノミクス(安倍政権の経済政策)』以降の政策を総括するべきだ」と話す。 

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