今回の総裁選は20人の推薦人が必要になって以降、最多の候補者になる公算が大きくなっている

自民党総裁選(12日告示―27日投開票)は「ポスト岸田」候補による立候補表明や政策発表の「ラッシュ」を迎える。一方で告示まで2週間を切り、出馬表明の予定を固められていない陣営によるギリギリの推薦人集めも大詰めになっている。

総裁選に出馬するには党所属の国会議員20人の推薦人が必要だ。今回の総裁選に参加できる衆参両院の議員は1日時点で367人で、同じ人が複数の候補者の推薦人になることはできない。

今回の総裁選は立候補を目指す議員の数が多い。1日時点で少なくとも7人が出馬表明したか、表明する記者会見を予定している。加藤勝信元官房長官、上川陽子外相、斎藤健経済産業相や野田聖子元総務相らも出馬への意欲を示す。

推薦人の基準が現行の20人になった2000年代以降の総裁選で候補者数が最も多かったのは08年と12年の5人だ。今回の総裁選はそれを更新する公算が大きい。

推薦人になった議員の名前は公表される。敗れた候補につくと新総裁のもとでの人事で冷遇されるといった懸念も存在する。そのため単に支持を得る以上に推薦人の確保は難しい。

上川氏は8月29日、国会内で記者団に「支持と推薦とのあいだに大きなギャップがあると実感している」と語った。8月23日に20人の推薦人を集められるとの認識を示していた斎藤氏も出馬表明の予定は発表できていない。

過去には告示前に推薦人の確保が難航する陣営に派閥などが推薦人を振り分けて恩を売るといった例もあった。派閥の解散が進む状況の今回も「別の候補の票を割るために推薦人を貸して出馬を後押しする動きがある」(閣僚経験者)という。

候補者の多さは出馬表明のタイミング選びにも響く。

別の候補と日程が重ならないほうが個々の陣営に報道や世論の関心が向かいやすいとの見方がある。台風10号で8月中の記者会見を延期した例なども相次ぎ、告示が迫るなか連日の発表ラッシュが予定される。

林芳正官房長官が3日、茂木敏充幹事長が4日に出馬表明の記者会見に臨む方向だ。小泉進次郎元環境相は6日、高市早苗経済安全保障相は9日に正式に出馬を表明すると発表している。林、小泉両氏は当初は8月中に予定していたものの台風で延期した。

石破氏は9月第1週に想定していた自身の政策を説明する記者会見を第2週の10日にずらした。

ある陣営の幹部は「各候補の日程が重ならないよう水面下で連絡をとりあっている」と語る。別の議員は世論の人気が高い小泉氏を念頭に「(小泉氏が出馬表明する)6日に発表ものは重ねたくない。何を主張しても埋没する」と話す。

連日、別の候補が発信すれば総裁選全体への注目にもつながる側面もある。結果として各陣営の発信の時期はすみ分けが進んでいる。

推薦人制度は1955年の自民党結党時にはなかった。自民党は候補者乱立を防ぐため、72年の総裁選から推薦人の制度を導入した。派閥の全盛期など50人までに増えた時期もあった。

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