百条委員会の証人尋問を終えて、報道陣の質問に答える斎藤元彦知事(8月30日、兵庫県庁)

兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラ疑惑などを内部告発された問題で、日本維新の会が試練に立たされている。事態の深刻さが明るみになっても事実関係の解明を優先するあまり、他党と比べて対応が後手に回っているためだ。世論の逆風が強まり、党勢に影を落としつつある。

藤田文武幹事長は8月31日、兵庫維新の会幹部や県議団と協議した。藤田氏は協議後、9月5〜6日の県議会調査特別委員会(百条委員会)による斎藤氏らへの証人尋問を踏まえて対応を決める立場を表明した。党幹部によると、7日にも再度協議する。

兵庫県議会では、立憲民主党や無所属の県議で構成する会派が斎藤氏への不信任決議案を提出する方針を決めた。

藤田氏は31日の協議後、記者会見で「他会派の不信任決議案への対応も求められる」と語った。「状況を見ながら、判断のスピードを早めないといけないという考えに至った」とも触れ、当初の想定から軌道修正した実情を認めた。

兵庫県議会が疑惑を受けて同委を発足させた当初、維新は静観する姿勢だった。対照的に、斎藤氏を知事選で同じく推薦した自民党側は早い時点で同氏に事実上の辞職を求めた。

維新が読み誤ったのは世論だ。8月末までに関係者の証言で数々の新たな事実が表面化し、斎藤氏への反発が強まった。にもかかわらず、馬場伸幸代表ら幹部は早期の事実解明を重視する立場を崩さなかった。

大阪府箕面市長選(8月25日投開票)で維新の母体、大阪維新の会が擁立した公認現職が初めて首長選に敗れると、党内に動揺が広がった。

予想外の敗北を受けて吉村洋文共同代表(大阪府知事)は27日、斎藤氏の説明の内容次第で辞職勧告決議案などを提出する可能性があると言及した。維新側で辞職を求める可能性に踏み込んだのはこれが初めてだった。

党内には問題が維新に飛び火し、次期衆院選に悪影響を及ぼしかねないとの懸念が強まる。党幹部の1人は「先週の時点で辞職勧告決議案を出すと決めるべきだった。1週間ほどの温情を与えても何も意味がない」と話した。

馬場代表は事実解明を求める主張を維持する。30日の日本経済新聞のインタビューに「雰囲気や自分たちが損をするからといってバサッとやると悪い前例になる」と述べた。

維新はかねて国会議員や地方議員の不祥事が相次ぎ、党内ガバナンス(統治)が効いていないとの指摘を受けてきた。先の通常国会でも自民党との交渉が暗礁に乗り上げ、政治資金規正法の改正で衆院と参院の賛否を変える異例の対応をとった。

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