自民党総裁選(12日告示、27日投開票)で、「脱派閥」とはかけ離れた実態があらわになりつつある。3日に立候補を表明した林芳正官房長官(63)は、岸田派ナンバー2の座長を務め、同派にいた議員を中心に支援を受ける。河野太郎デジタル相(61)や、4日に出馬表明する茂木敏充幹事長(68)も、派閥が支持基盤になりそうだ。岸田文雄首相が打ち出した派閥解散の意義が改めて問われている。

◆解散決めたと言っても安倍、茂木、二階の3派閥は存続

記者会見で自民党総裁選への立候補を表明する林芳正官房長官=衆院第2議員会館で(佐藤哲紀撮影)

 林氏の陣営は、出馬表明に向け、8月下旬から、少なくとも3回の会合を開いたが、各回の出席者約20人のほとんどは岸田派議員だった。林氏以外の候補を支援する中堅議員は、「林さんは派閥の支援を受ける『ザ・派閥』の候補だ」と冷ややかな視線を向ける。  林陣営は「派閥色」を消そうと躍起だ。出馬表明当日には、岸田派の政治団体としての解散届を総務省に提出し、選対幹部には無派閥議員をあえて登用した。それでも林氏は、出馬会見で「議員生活のほとんどを宏池会(岸田派)の皆さんと切磋琢磨(せっさたくま)してきた。派閥はなくなってもその関係は続くものだ」と配慮をにじませた。  首相は1月、派閥パーティーの裏金事件を受け、唐突に岸田派の解散を表明。同月の党政治刷新本部の中間取りまとめでも、派閥の「解消」を打ち出した。それだけに、党内からは「派閥解散を訴えた張本人の首相が率いた派閥の候補が、派閥べったりの選挙をやろうなんて、国民にどう見られるか考えたことがあるのか」(中堅議員)と疑問の声ももれる。  自民内にあった6派閥のうち、麻生派以外は解散を決定したが、法的には安倍、茂木、二階の3派閥は存続している。林氏だけでなく、河野氏は所属する麻生派の麻生太郎副総裁(会長)をはじめ、同派議員の支援を受ける。茂木氏も、自身が会長だった茂木派議員が支持母体となる。同派議員は「当然茂木派が支援の中心になる。派閥を通じたお付き合いがあった人たちのかたまりだから」と語った。(川田篤志)

 派閥の解散 政治資金規正法によると、派閥などの政治団体が解散する場合、解散の日から30日以内に、総務相か都道府県選挙管理委員会に文書で届け出る必要がある。収支や資産も報告しなければならないが、規正法には残った財産に関する規定がないため、清算時の透明性の確保に課題がある。



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