自民党総裁選(27日投開票)の9人の候補者が14日、日本記者クラブ主催の討論会に臨んだ。候補者同士の討論では、石破茂元幹事長の「原発ゼロ」を巡る発言について、小林鷹之前経済安全保障担当相が真意を問うた。河野太郎デジタル相に対しては、記者クラブ側が「脱原発の旗は降ろしたのか」と改めてただした。石破氏と河野氏は、それぞれどう説明したのか。(宮尾幹成)

◆石破氏「結果として原発のウエイトを下げることになる」

石破茂氏は、総裁選に立候補表明した8月24日の記者会見では、原発について「ゼロに近づけていく努力を最大限にする。再生可能エネルギー、太陽光であり風力、小水力、そして地熱、こういう可能性を最大限引き出していくことによって、原発のウェイトは減らしていくことができる」と話していた。その後、9月10日の政策発表の記者会見では「原発ゼロが自己目的なのではない。安定したエネルギー供給が国家にとっての生命線の一つであるという考え方に全く変わりない」と発言を軌道修正していた】

候補者討論会で発言する石破茂氏=9月14日、東京都千代田区で(池田まみ撮影)

小林 「石破候補に原発政策について質問させていただく。今後、電力需要は劇的に増加していく。経済成長を続けるためには安価で安定した電力供給が不可欠になる。安全性が確認された原発の再稼働、そしてリプレイス(建て替え)、新増設、私は取り組んでいくべきだと考えている。(石破候補は)原発ゼロ、少なくとも原発比率を下げるというお考えなのか、 仮にそうである場合、電力需要はこれから激増すると見込まれる中で、どうやって安価で安定した電力供給を確保していくのか」 石破 「3・11の教訓は決して忘れてはいけない。あの時に、原子力災害というのはいかに恐ろしいかということを思い知ったはずだ。私は22年前に防衛庁長官をやっていた時に、原発はどれぐらいの攻撃に耐えられるのかということは子細に検討した。原発の安全性は最大限に高めていかなければならない」 「再生可能エネルギーは最大限にその可能性を引き出したのだろうか。地熱は世界第3位の潜在力を持っている。 これだけ傾斜のきつい国で、小水力発電の可能性は最大限に引き出していくべきだ。AI社会は確かに電力を食う。しかし、新しい半導体の工場は従来の半分の電力でやっていけるということだ。省エネも最大限にやっていかなければならない。それは、結果として原発のウエイトを下げることになっていくということだ。そのこと自体が目的なのではない」 小林 「エネルギー政策は本当に(国の)根幹だと思っている。省エネが進まない最悪のケースにもしっかりと備えるべきだ。再エネを増やせば、少なくとも当面は電気料金は上がり、国民の暮らしを圧迫し、産業競争力は低下する。より現実的な視点に立ったエネルギー政策を求めていくべきだ」

◆「前提条件が大きく変わった。現実的な対応策を」

【かつての河野太郎氏は自他ともに認める、自民党きっての「脱原発」派だった。東京電力福島第1原発事故後の2012年3月、超党派の議員連盟「原発ゼロの会」(現在は「原発ゼロ・再エネ100の会」)の設立発起人となり、共同代表に就任。自民党のエネルギー関係の部会で、原発の維持や推進を求める議員と激しく議論したり、出席した資源エネルギー庁幹部を叱責したりする場面も頻繁に見られた】

候補者討論会で発言する河野太郎氏=9月14日、東京都千代田区で(池田まみ撮影)

記者 「河野さんはかつて脱原発を掲げていたが、この旗を下ろしたということで良いか。ご自分の一種の基本政策だったわけで、あまりにも変わりすぎているような印象も受ける。過去の発言と現在地との整合性をどのようにお考えか」 河野 「2007年に日本の電力需要は1兆kWhでピーク、そこから17年連続で電力需要が減っている。このままいくと、2050年に約8000億kWhになる。1%ずつ伸びている再生可能エネルギーの導入量を倍にすると、2050年にはだいたい8000億kWhにいくだろう。だから再生可能エネルギーで2050年はまかなえるのではないか、というのが私の基本政策だった」 「ところが最近は、データセンターとAIが入ってきて、電力需要が右肩下がりどころか、逆に右肩上がりになってきて、2050年に1兆4000億kWh(キロワット時)という需要予測が出ている。これに対して、電力供給をしっかりすることができないと、データセンターが海外へ行ってしまって、そこで日本人の個人情報をハンドリングする(管理する)、あるいはAI投資が外国へ逃げるということになっては、経済にも大きなダメージだから、まず8000億kWhの再生可能エネルギーをしっかりと確保する。これだけでも結構大変だ」 「それに原発再稼働をして約1兆kWh。まだ4000億kWh足らない部分がある。今考えられるあらゆる技術に張っておいて、2050年までに省エネで電力需要をどこまで減らせるのか、2050年が近づくにつれて、今見えない技術のどれが実用化されていくのか。供給がしっかりできるようになれば、今度はメリットオーダー(発電コストの低い順)でそれを入れていけばいい。前提条件が大きく変わったので、現実的な対応策を考える必要がある」 

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