23日に北海道・礼文島付近の領空を侵犯したロシア軍の哨戒機=防衛省統合幕僚監部提供

ロシア軍の哨戒機1機が北海道の礼文島沖北方で日本の領空を3度侵犯した。緊急発進した自衛隊機による退去の求めを繰り返し無視しており、重大な挑発的行為だといわざるをえない。

自衛隊の戦闘機はロシア軍機に対し、領空侵犯への措置としては初めて、強い光と熱を放つ「フレア」を使用した。3度目の侵犯を強行したロシア軍機に対する警告であり、妥当な措置だった。

政府が外交ルートを通じ、直ちにロシアへ厳重抗議したのも当然だ。領空侵犯は一歩間違えれば偶発的衝突を引き起こしかねない。過去にも挑発を重ねてきたロシアに断固として再発防止を求める。

領空侵犯は23日午後、ロシアと中国が極東で海軍の合同軍事演習を実施しているさなかに起きた。同日には中ロ海軍の艦艇計8隻が宗谷海峡を共同航行するのも確認されており、領空侵犯との関連が指摘される。日本周辺の空域では近年、中ロの爆撃機の共同飛行も相次いでいる。

中ロによる軍事協力の拡大で、東アジアの安全保障環境は危機的な状況にある。6月にはロシアのプーチン大統領が北朝鮮を訪れ、ロ朝の軍事協力の強化を盛り込んだ「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。

中ロはアジア太平洋地域における米軍の軍備増強の動きを激しく批判してきた。今回のロシア軍機による領空侵犯や中ロの合同軍事演習も、防衛協力を深める米国と日本、韓国、オーストラリアなどをけん制する狙いが明らかだ。

特に日本は27日に自民党総裁選を控える。ウクライナ侵略を巡り鋭く対立し、政権の移行期にある日本を揺さぶる思惑がロシアにはあるだろう。今後も挑発的行為への警戒を怠ってはならない。

ロシアや中国など強権的国家に隙を見せれば、東アジアの安定が大きく揺らぎかねない。日米韓や北大西洋条約機構(NATO)はさらに結束を固め、軍事面で連携を広げる中ロの動きに冷静に対処していく必要がある。

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