総裁選の投開票日、石破茂氏の決起集会に参加した村上誠一郎氏=9月27日、国会内で(由木直子撮影)

1日に発足する石破茂内閣では、村上誠一郎元行政改革担当相(72)=衆院愛媛2区、12期=が総務相に起用されることになった。村上氏の入閣は実に19年ぶり。村上氏は石破氏と並ぶ安倍政権時代の「党内野党」の代表格で、2022年に銃撃されて死亡した安倍晋三元首相を「国賊」と難じたことが報じられるなど、安倍氏と極めて折り合いが悪かったことで知られる。旧安倍派からは、重要ポストへの抜てきに反発も出ている。(デジタル編集部)

◆旧安倍派は反発「党内融和とほど遠い」

村上氏は午後4時20分ごろ、首相秘書官からの官邸への呼び込みの電話を受けた。

官邸からの呼び込みの電話を受ける村上誠一郎氏=10月1日、国会内の村上氏の事務所で(佐藤裕介撮影)

村上氏は報道陣の取材に、裏金問題や旧統一教会問題を挙げて「前任者のいろんな負の遺産がある。これをどう解消しながらやっていくかというのは非常に難しいなと心配している」と述べ、株価の乱高下や円安についても「残念ながらアベノミクスの負の遺産だと思う」と指摘した。その上で、「総務相は非常に守備範囲が広い。新たな課題もあり、勉強する必要があるので、当面はそれに集中しようと思う」と意気込んだ。 19年ぶりの入閣となったことについては「納得いく人の下で働きたいので、あえてポストを求めなかった」と説明しつつ、「支持者が『よく筋を通して頑張ってくれた。嬉しかった』と言ってくれた時は、私もじーんときた」と涙ぐんだ。 旧安倍派の若手は、村上氏の入閣について「安倍元首相がいた時代なら、ありえなかった。天下が『リベラル』に取られ、時代が完全に変わってしまった」と嘆息。「党内融和とはほど遠い人事だ」と懸念した。

◆特定秘密保護法、集団的自衛権行使に反対

村上氏は2022年9月、報道機関の取材に、安倍氏の国葬について「最初から反対だし、出るつもりもない」との考えを示した際、安倍氏を「国賊」と表現。村上氏自身は「発言を覚えていない」と釈明したが、自民党は村上氏を1年間の党役職停止処分に。安倍派を中心に、村上氏に対する厳しい声が上がった。

安倍晋三元首相の国葬=2022年9月27日、東京都千代田区の日本武道館で

村上氏と安倍氏の因縁は、第2次安倍政権の発足当初からのものだ。 村上氏は2013年11月に、安倍政権が提出した特定秘密保護法案について、「党内で熟議が尽くされていない」などとして衆院本会議の採決を退席。2014年に安倍政権が集団的自衛権の行使容認に向けて閣議決定で解釈改憲しようとした際は、憲法9条に基づく平和主義は「絶対に変えてはいけない基本原則だ」と訴え、反対を明言した。 村上氏に対し「自民党を離れるべきだ」という意見も寄せられたが、村上氏は2016年の著書「自民党ひとり良識派」で「解釈によって立憲主義と民主主義を捻(ね)じ曲げてしまった政権とそれを許した自民党執行部こそが猛省すべきではないでしょうか」と記し、離党する理由はないと説明している。 森友学園の決裁文書改ざん問題を巡っても、安倍氏周辺が疑惑の沈静化を図る中、村上氏は「国民の疑念は晴れていない」などと指摘した。 自民党税制調査会のメンバーを長く務める財政規律重視派としても知られ、安倍政権が進めた積極財政色の濃い経済政策「アベノミクス」には批判的な立場をとった。原発再稼働にも慎重な姿勢を示してきた。

◆「ガス抜きに利用されている」との見方も

自民党の岸田文雄政調会長(当時)と談笑する村上誠一郎氏=2017年11月7日、国会内で(小平哲章撮影)

村上氏は河本敏夫元通商産業相の秘書を経て、1986年の衆院選で自民党公認で初当選し、現在12期。2004年9月に第2次小泉改造内閣で行政改革担当相として初入閣し、2005年10月まで務めた。今回の入閣はそれ以来となる。菅義偉内閣で棚橋泰文元科学技術担当相が国家公安委員長に起用された際、16年ぶりの入閣として話題になったが、村上氏のブランクはこれを上回る長さだ。 第2次安倍政権以降は、党の最高意思決定機関である総務会の常連メンバーとして、特定秘密保護法案などの論争的な案件で党議決定にたびたび異を唱えた。安倍政権に批判的な勢力からは喝采を浴びることも多かった半面、「ガス抜きに利用されている」との冷ややかな見方も付きまとった。

◆石破茂氏の推薦人になること3回

石破茂氏がこれまでに立候補した5回の自民党総裁選のうち、2018年、2020年、2024年の3回で石破氏の推薦人に名を連ねた。立憲民主党の岡田克也前幹事長は義弟(妹の夫)に当たる。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。