自民党は1日召集した臨時国会の会期を9日までとする方針を堅持した。早期の衆院解散・総選挙を優先する狙いがあるものの、野党は国会論戦を拒んでいると反発した。石破茂首相は党内の結束に加えて国会運営にも不安が残り、政権は波乱の船出となった。
「国会軽視が甚だしい。憲法上の疑義を生じさせかねない発言で、謝罪と撤回を求める」。立憲民主党の小川淳也幹事長は1日午後の衆院本会議で反対討論に立ち、石破氏が首相指名を受ける前に衆院選の日程に言及したことを批判した。
同日午前、自民党の坂本哲志、立民の笠浩史両国会対策委員長は国会内で会談した。坂本氏は会期を9日までとして同日に党首討論を実施すると伝えた。立民が要求する衆参両院の予算委員会の開催に応じなかった。
これを受けて、野党4党の国対委員長が対応を協議し小川氏の反対討論が決まった。直前まで調整が続き、本会議の開始は午後1時の予定から30分近く遅れた。
首相は総裁選中に「国民に判断材料を提供するのは新首相の責任。本当のやりとりは予算委だ」と主張し、国会論戦に前向きな姿勢を示していた。それが就任前の9月30日に衆院選日程を「10月27日投開票」と表明した。
野党は予算委での十分な質疑や、能登半島地震や豪雨の被災地を支援するための補正予算編成を求めてきた。それだけに首相の方針転換は強い反発を呼んでいる。
立民の野田佳彦代表は1日、国会内で記者団に「堂々と議論に向き合う政治家だと思っていたが、とっとと逃げてしまい深い失望を覚えている」と語った。「『ルールを守る自民党』といって、自分がやってきたことを守らない」とも触れた。
日本維新の会の馬場伸幸代表は「敵前逃亡内閣だ。顔ぶれはそろえても一度も議論をしないまま解散し、戦う前から逃げている」と断じた。
共産党の田村智子委員長は「最初から逃げる内閣、論戦を回避する内閣」と非難した。国民民主党の玉木雄一郎代表は「首相は自民党を変える前に自分が変わってしまい、言っていることとやっていることが違う」と話した。
首相は1日夜の記者会見で「9日解散」を明言した。就任から8日後となって戦後最短だ。2021年に就いた岸田文雄前首相の10日後より短い。
首相が早期解散に踏み切るのは、新内閣発足直後は高い支持率を期待できるためだ。解散前に党首討論を実施する見通しだが、予算委は開かない。初入閣13人と閣僚の答弁能力は未知数で、野党との論戦を避けたいとの思惑が透ける。
自民党内からは、早期に解散した方が補正予算や25年度の本予算の編成に十分な時間を確保できるとの声も上がる。
国民が国会運営について強引だとのイメージを持てば、首相にとっては痛手となる。首相に就いたことで立場を変えたとみなされれば、有権者の失望につながるリスクもある。
自民党内の挙党体制づくりも道半ばだ。首相は1日、本会議での首相指名選挙で投票するための列に並ぶと、ひとり前に麻生太郎党最高顧問が歩いていた。周辺にいる議員を呼び寄せて麻生氏との間に入るように促す場面があった。
麻生氏は最高顧問を引き受けたものの、首相と距離をとる姿勢を示す。9月30日に党の新執行部の写真撮影に応じず、周囲の引き留める声を振り切って退室した。かつて麻生政権で現職閣僚でありながら首相退陣を迫られた因縁がある。
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