石破茂政権は首相官邸の体制を整えた。事務方トップの官房副長官に元総務次官の佐藤文俊氏が就いた。旧自治省出身で地方行政に精通する。筆頭の首相秘書官は元防衛審議官の槌道明宏氏を充てた。首相が重視する地方創生と防衛という政策分野の人脈でカラーを発揮した。

第2次安倍晋三政権以降は警察庁出身の杉田和博、栗生俊一両氏が続いた。旧自治省出身者の就任は2009〜11年の滝野欣弥氏以来となった。

佐藤氏は1979年に旧自治省に入り、2016〜17年に総務次官を務めた。首相は地方創生相を経験し、地域の課題の解消に関心を寄せる。

旧自治系の総務省幹部と定期的に意見交換を重ね、佐藤氏とも面識があったとされる。首相の父の石破二朗氏は元自治相だった。

ある総務省幹部は佐藤氏に政策を相談すると、逆に意見を聞かれ背中を押してくれたという。自分の主張を押しつけず多くの人の意見を聞く「バランス感覚がある」との評価がある。

事務担当の副長官は各省庁間の調整を担う。戦前の旧内務省の流れをくむ総務省、厚生労働省、警察庁の次官級経験者から起用するのが一般的だ。

首相秘書官は8人で岸田文雄政権と人数は変わらない。政務秘書官2人は官僚OBと議員事務所から、6人の事務秘書官は各省庁が派遣するという構成も変えない。

これまで筆頭秘書官は元経済産業次官の嶋田隆氏が務めていた。槌道氏は防衛省ナンバー2の防衛審議官だった。首相の防衛相時代に秘書官として耳の痛い意見も伝えたとされる。

槌道氏は旧防衛庁へ1985年に入った。島田和久元防衛次官と同期で、島田氏は安倍首相の秘書官が長かった。防衛省内で「石破秘書官の槌道氏が安倍秘書官の島田氏に次官レースで敗れた」との解説がある。

政策担当秘書として20年以上首相を支えてきた吉村麻央氏は唯一の女性秘書官になる。早大在学中に政策担当秘書の資格試験に合格し、あいうえお順に国会議員の事務所に問い合わせし、石破事務所に採用された。

首相が防衛庁長官のときも政務秘書官で、総裁選で首相の公約の作成やSNSでの発信などを担った。英語を得意とし、大学で講義を受け持つ。陸上自衛隊の予備自衛官として登録したこともある。

事務秘書官は外務、財務、経産各省や警察庁が中心に出す。今回の特徴は厚生労働省からも選んだことだ。

官房審議官だった熊木正人氏を登用した。元医政局総務課長として日本医師会ともパイプがある。岸田政権で少子化対策の拡充に関わった。

岸田首相は同省から秘書官をとらず、財務省出身者を2人置いて重視した。そのうちの一人は宇波弘貴氏や一松旬氏ら厚労分野の予算に精通した財務官僚を据えて、少子化や新型コロナウイルスへの対策を担当させた。

石破政権は財務省から主計局次長の中島朗洋氏が仕える。文教や公共事業の分野を歩んできた。自民党の麻生太郎最高顧問の財務相秘書官を務めた。

外務省からは北米局参事官の貝原健太郎氏が就任する。北米第一課長などを歴任し、対米外交に長く携わる。防衛省からは防衛政策局次長の吉野幸治氏を挙用した。

経済産業省からは資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長の井上博雄氏を置く。内閣府の原子力被災者生活支援チームに在籍した。

警察庁は警察大学校副校長兼官房審議官の土屋暁胤氏を出した。危機管理などを手がける。

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