15日に公示される見通しの衆院選で、自民党の比例区の名簿順位をめぐる綱引きが始まっている。票の格差是正に伴い、広島など10県で小選挙区が1減るため、小選挙区で前回当選した現職が、比例に回るケースが続出している。名簿順位を優遇してもらおうと、党本部に陳情する動きもある。

 3日午後2時。自民党本部の幹事長室を、自民党広島県連会長代理の中本隆志・県議会議長(65)らが訪れた。比例中国ブロックで立候補予定の新谷正義氏(49)らの名簿順位を上位にしてもらうためだ。

 比例区は名簿上位から当選が決まることから、名簿順位は「総裁が決める案件」(党関係者)とされる。森山裕幹事長(79)と面会した中本氏は取材に対し、「必ず当選できる順位にしてくださいとお願いした」と説明。森山幹事長からは「それなりの対応をする」と回答があったという。

 4期目の新谷氏は、過去2回の衆院選では旧広島4区から立候補して当選した。しかし、1票の格差是正のため、首都圏などの定数を増やす公職選挙法の改正「10増10減」により、広島は小選挙区が一つ減った。そこで、新谷氏が比例に回ることになった。

 同じ比例中国ブロックの5県では、山口と岡山も選挙区が1減。山口では安倍晋三元首相の後継として、補選に当選した吉田真次氏(40)が、岡山では旧3区で前回議席を争った平沼正二郎氏(44)と阿部俊子氏(65)がともに比例に転出する。

 その比例中国ブロックの定数は、前回の11から10に減る。前回は6議席を獲得したが、政治とカネの問題などで「今回は逆風。せいぜい4議席が限界だ」(広島県連関係者)との声も上がる。厳しい議席争いになる見通しで、中本氏は「小選挙区で勝てる人間を外すならば、(党として)当選できる対応をするのが普通の考え方だ」と強調する。

 さらに、広島には特殊な事情がある。

 現職の石橋林太郎氏(46)は前回、公明党の斉藤鉄夫国土交通相(72)に旧広島3区を譲り、比例単独で立候補した。前回は比例名簿1位で、今回も同様の措置を求めている。石橋氏は「党の決定に従うのは僕は2回目だが、ほかの皆さんは1回目。そこは考えてもらいたい」と話す。

 同じく小選挙区が1減する宮城では、旧4区選出の伊藤信太郎前環境相(71)と、旧5区で落選した森下千里氏(43)が4区での立候補を希望。宮城県連は2人を支部長候補として申請したが、党本部は昨年3月、伊藤前環境相を4区に充て、森下氏は比例に回すと決めた。(山中由睦、福留庸友)

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