「総裁選中の発言とは異なり、石破氏は予算委員会を行わないまま解散に踏み切る意向を示しました。そのことははっきりと指摘すべきでしょう」

 9月29日配信の記事「衆院選『10月15日公示・27日投開票』 石破氏、方針固める」に、法政大学教授の上西充子さんは、こうコメントした。

 記事では、自民党の石破茂新総裁が10月1日召集の臨時国会で首相指名後、速やかに衆院解散・総選挙に踏み切る方針を伝えた。一方で石破氏が総裁選中、国民に判断材料を提供するのが「新首相の責任」であり、「本当のやりとりは予算委員会だ」と議論の必要性を強調していたことを紹介。その上で、その機会を確保するために党首討論を開く案などが浮上している、と伝えた。

 コメントで上西さんは記事について、「石破氏側におもねった書き方のように見えます」と指摘。総裁選では予算委の必要性について語っていた「にもかかわらず」、開かずに「党首討論だけで済ませることにした」と「はっきりとわかるように書くべき」だと指摘した。

 質問とは趣旨をずらした国会答弁を「ご飯論法」と名づけたことで知られる上西さんは、これまで多くの政治家発言をつぶさにチェックしてきた。今回のケースでは、石破氏が総裁選中の9月14日にあった日本記者クラブ主催の討論会で、議論の場として「本会議」の代表質問では不十分との見方を示し、「予算委」が本当のやりとりの場だと言及していた一方、「党首討論」には触れていなかったことに注目した。

 上西さんは「早期解散を唱える小泉氏との対比を浮かび上がらせたものの、当初から党首討論という可能性も念頭にあったのでしょうか」として、石破氏の物言いに疑念を投げかけた。

 「だとすれば、石破氏も『大事なことをあえて語らない』ことによって聞き手に異なる印象を与える語り口を採用している可能性があります」

 その上でメディアに対し、総選挙の際は「総裁選で石破氏が語っていたことと首相になってから石破氏が語ること」を「ぜひインフォグラフィックスなどでわかりやすく対比させて報じてください。そのことが、総選挙に向けて国民に有益な判断材料を与えることになります」と注文をつけた。そのうえで、こうコメントを締めくくった。

 「前に語っていたことと異なることを石破氏が語り始めたときに、過去の発言と対比させないとその違いははっきりと分かりません。『石破首相は…と述べた』と発言を紹介するだけの報道にならないよう、今が肝心です」

 この記事や、上西さんのコメント全文はこちらから(http://t.asahi.com/wo8s)。同じ記事には社会学者の西田亮介さん、教育学者の末冨芳さんらもコメントしています。

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