石破茂首相と立憲民主党の野田佳彦代表は5日、それぞれ石川県を訪れ、能登半島地震と9月の記録的な大雨による被害の状況を視察した。首相が防災行政に注力する姿勢を示す一方、野田氏は補正予算の編成を先送りして早期の衆院解散に突き進む首相を批判。住民からは、政治に対し、速やかな助けを求める声が相次いだ。

 首相は5日、石川県輪島市と珠洲市を訪れ、大雨で複数の住宅が流された現場や浸水した仮設住宅、地震後の大規模な火災で焼失した輪島朝市などを視察した。首相は4日の所信表明演説で「人命最優先の防災立国を構築しなければならない」と語ったばかり。一夜明けてさっそく、就任後最初の訪問先として能登の被災地に足を運び、防災行政に注力する姿勢を強調した。

 視察後、記者団の取材に応じた首相は「短期間に二つの災害が起こり、絶望の淵におられる方々に、できる限り最大限の支援をしたい」と述べた。持論の防災庁設置についても「内閣府の外局として創設を図るため、担当大臣を任命した。本当に困っている人々が、どこで何が起きても同じ支援が受けられるよう、内閣として尽力していきたい」と語り、改めて意欲を示した。

「現地を見れば選挙準備できるかどうか分かったはず」

 だが、そんな首相に対し、「言行不一致」を指摘する声も出ている。この日、同じく能登の被災地を視察した野田氏は、選挙実務にあたる自治体職員も災害復旧に奔走している状況だとし、「全国であまねく選挙の準備ができるかどうかは、現地を見れば当然分かったはずだ」と指摘。衆院の早期解散の方針を改めるよう首相に求めた。

 さらに「補正予算は必要不可欠だ」とも語り、予備費で対応するとしている首相を批判。「年を越すためにどうしたらいいかと心配している人がいっぱいいる。(再建の)見通しを持てるかが被災者には大事だ」と述べ、予備費では不十分との認識を示した。

 首相は自民党総裁選の期間中、衆院解散の時期をめぐり、「国民に判断していただける材料を提供するのが、新しい首相の責任だ。本当のやりとりは予算委員会だと思う」と論戦の必要性を指摘した。

 それにもかかわらず、早期解散を求める党内の声に押され、党首討論を開くだけで9日に衆院を解散する方針を決めた。野田氏は「過ちては改むるにはばかることなかれだ」と翻意を求めた。(宮脇稜平、大久保貴裕)

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