◆「海外メディアも注目していた」
—女性閣僚は岸田政権の5人から2人に減った。発足した石破内閣。石破茂首相(前列左から3人目)と閣僚らが並ぶが、女性は2人だけだ=1日、平野皓士朗撮影
「石破首相は総裁選で『先進国中最下位に甘んじている女性活躍の指標の迅速かつ大幅な改善を図る』と政策集に掲げ、選択的夫婦別姓に賛成であることに海外メディアも注目していた。本気度を見極める試金石として人材配置に注目したが、女性2人は歴代と変わらず、石破首相が挙げていた五つの柱のうち『若者と女性の機会を守る』の優先順位は事前に約束されたほど高くないのではという第一印象を持った」 —スウェーデンと日本の違いはどこにあるのか。 「両国の大きな違いは若者が声を届けやすいかにある。選挙に出ているか、投票率はどうなのか。若者が社会にどれだけ参加できるかは、実は男女平等の問題にとっても非常に重要だ。データを見ると、若い男性のほうが高齢の女性よりも男女平等感を強く持つ」スウェーデンのジェンダー平等 世界経済フォーラム(WEF)の2024年の男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告で、スウェーデンは調査対象の146カ国中5位だった。日本は118位にとどまる。この報告によると、スウェーデン議会の女性比率は46.7%、閣僚級は47.83%と半数近い。
◆「衆議院の小選挙区制は新陳代謝が非常に遅い」
—なぜ日本では政治分野の男女平等が遅れたのか。 「女性を含めて新しい人が参入しにくい構造の選挙制度が大きな障壁ではないか。特に衆議院の小選挙区制は新陳代謝が非常に遅い。地盤・看板を持った人が同じ選挙区に出続ければ、割って入るのは難しい。供託金の高さも議論になる。地方と東京の頻繁な往復を求められる政治活動のあり方も、女性には男性以上に大きな負担だろう。意図的かどうかは別として、女性や若者にとって日本の制度は非常に壁が高い」 —政治分野における男女共同参画推進法の施行から6年。変化はあったか。 「前回の2021年衆院選では、政党によっては均等と程遠い女性候補者比率だった。次の衆院選では準備が間に合わないとか人材が育っていないとかの言い訳も難しくなり、各政党の本気度が試される。一方、地方レベルでは女性の議員や首長が増えている。変化は確かに起きており、悲観はしていない」ウプサラ大の奥山陽子助教授=本人提供
◆「政治以外の男女格差が東アジアの国々と比べても顕著に大きい」
—女性の参加は政治に変化をもたらすのか。 「民主主義は全市民が参加するときに機能が最大限発揮されるが、日本は十分に機能していないといえる。政治分野で女性を増やした国では予算配分や法律案の種類に変化が生じる。フランス議会でパリテ(両性同数)法を導入した前後を比べた実証研究があり、男女平等や女性の権利に関する法律が増えた。鶏と卵のような関係だが、女性が政治に増えれば女性が社会に参加しやすくなる法律の整備が進む。裏返せば政治の場に女性が少ないと、女性の社会参加や権利の面で必要な法律が整備されにくい。循環的な関係にある」 —日本ではそのような循環が起きていないのか。 「政治以外の男女格差が、東アジアの国々と比べても日本では顕著に大きい。政治における男女格差がその土壌といえる。メディアにもよく登場するリーダーの政治家に女性が少なければ、他の分野でも女性がリーダーになりにくい。例えば、インドの研究では女性村長が増えると、自分もリーダーになりたいと考える女の子が増える」奥山陽子(おくやま・ようこ) 専門はジェンダー格差に関する労働・政治経済学の実証研究。米エール大博士(経済学)。2020年からウプサラ大経済学部助教授。1989年生まれ。神奈川県出身。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。