自民党は21日、党本部で開いた政治改革本部(渡海紀三朗本部長)の総会で政治改革案を決めた。政治資金規正法の再改正に向けて野党との協議を急ぐ。28日召集の臨時国会の日程は窮屈で、法案提出前の与野党合意をめざす。野党第1党の立憲民主党の協力を得られるか不透明さが残る。
石破茂首相(自民党総裁)は会合後、首相官邸で記者団に「年内に決着をみるべきものはみるべきだと考えている。それぞれの党において精力的な議論を期待したい」と呼びかけた。
年明けの1月召集の通常国会で政治改革と並び政権の最大課題と位置づける2025年度予算案の審議が始まる。首相が年内の再改正をめざす背景には政治資金問題が通常国会にもつれ込むと審議に影響を及ぼすとの危機感が浮かぶ。
野党側が25年度予算案の成立と引き換えに政治改革で自民党に譲歩を迫る可能性も出る。25年夏に参院選や都議選も控えており、政権側には政治資金問題で守勢に立つ状況はなるべく避けたいとの思惑がある。
年内の再改正は綱渡りになる。政府・与党は臨時国会の会期を12月21日までと見込む。物価高対策や能登半島の復旧・復興を柱とする24年度補正予算案の成立を優先するため規正法に割けるのは1週間程度に限られるとみられる。
審議時間の短縮には事前に党派を超えて大筋合意し、委員長提案で本会議に提出するなどの形式をとる必要がある。自民党幹部は「委員会で法案の賛否を巡り議論していたら年内の成立は難しい」との認識を示す。
6月に成立した改正規正法は自民党が単独で国会に出した。その後に連立を組む公明党を含めて各党の委員会理事による修正協議を経て、成立まで1カ月ほどを要した。
自民党の森山裕、公明党の西田実仁両幹事長は19日の会談で与野党が政治改革を協議する場をつくると確認した。立民や日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組、共産党に参加を求める。
非公式の場を設け、臨時国会の予算委員会で補正予算案の審議をしている間も話し合う場を確保する狙いもある。自公は経済対策に関し国民民主のみと協議を重ねたものの、政治改革は幅広い野党との合意を迫られる。
カギを握るのが立民だ。同党の野田佳彦代表は10月の衆院選以降に「事前の政策協議は基本的にやらない」と明言してきた。11日に首相と党首会談した際も政治改革特別委員会で規正法改正案を協議したいと伝えた。
重徳和彦政調会長は21日、国会内で記者団に「与党が協議の場を申し入れをしていると承知している。そこの対応は足並みをそろえる」と語った。議論の公開を主張する立民の幹部は「フルオープンの開催で提案を受けている」と明かす。
維新の藤田文武幹事長は同日の記者会見で、森山氏から参加の打診があり、受け入れると伝えたと明かした。国民民主も協議に入ると表明した。
政治改革特別委は立民の渡辺周氏が委員長提案や法案の審議入りで権限がある委員長を務める。立民抜きで与野党協議を進めたとしても、自民党が理想とする日程や内容のまま法案成立にこぎ着けるのは難しい。
立民が協議に参加しても政治改革の中身に隔たりがある。
21日の自民党本部の総会は企業・団体献金の禁止に慎重な意見が目立った。立民や維新は企業献金の禁止を訴え、禁止に慎重だった国民民主も条件付きで賛同の余地を残す。
首相は21日、記者団に「基本的に民主主義のコストを誰が負担するのが正しいのかということに帰着をするのだろう。色々な議論が各党間で行われると承知をしている」と話した。
自民党の22年の党本部収入をみると企業・団体献金が1割ほどを占め、他党に比べて多い。企業献金への依存度を下げるために個人献金を促す税制改正を掲げる方針をとる。
立民内には企業献金禁止で合意できなければ25年の通常国会で議論を続けるシナリオが浮かぶ。
自民党が政治資金問題の年内決着にこだわれば野党への譲歩が一段と必要になる可能性が出てくる。一方で党執行部は政治とカネの問題が長引けば党勢回復が進まないと懸念する。
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