重要経済安保情報保護法案を可決した参院内閣委=国会で

 政府が指定した経済安全保障上の機密情報を扱う民間人らを身辺調査する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の導入を柱とした重要経済安保情報保護法案は、9日の参院内閣委員会で、与党や立憲民主党などの賛成多数で可決された。共産党やれいわ新選組は反対した。法案には複数の団体からも懸念が出ているが、10日の参院本会議で成立する見通し。  法案では、機密情報の詳細などを定めた運用基準を、政府が成立後に閣議決定するとしており、審議が深まらない要因となっている。9日の参院内閣委では、共産の井上哲士氏が「国会審議の形骸化は免れない」と指摘すると、岸田文雄首相は「本法案で特定秘密と同程度の詳細さで規定している。指摘は当たらない」と反論した。

◆先端研究「閉鎖的で独善的になる危険性」

 4月半ばからの参院審議は20時間余り。今月7日には参考人の斎藤裕弁護士が、適性評価による人権侵害防止のために「法律に基づいて第三者機関を設け、報告聴取権限を与える必要がある」と訴えた。東北大の井原聡名誉教授(科学史)は、学術機関の先端研究情報も指定対象になり得ることから「閉鎖的になり独善的な研究に入り込む危険性がある」と警鐘を鳴らした。  日本弁護士連合会(日弁連)などの団体も、反対声明をウェブサイトで発表している。日弁連や各地の弁護士会は、基準があいまいな情報の漏えいに罰則を科している点を罪刑法定主義から疑問視する。

◆精神疾患の有無による適性評価は「あからさまな差別」

 日本消費者連盟は、企業情報の閉鎖性が高まる恐れがあることから、「消費者の知る権利を奪う」と主張。日本病院・地域精神医学会理事会は、適性評価の調査項目に精神疾患が設けられている点を「誰もがなり得る疾患にもかかわらず、あからさまな差別」と批判する。日本労働弁護団は、適性評価で不認定となった場合に、対象の情報を扱う仕事ができなくなることなどに懸念を表明。「拙速な成立は避けるべきだ」と主張している。(大杉はるか) 

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