静岡知事選への出馬について県庁前で取材に応じる大村慎一氏

川勝平太・静岡県知事が6月の県議会定例会を待たずに10日にも辞職を申し入れる意向を示し、最速で6月と見られた知事選が前倒しとなる公算が大きくなった。8日には元県副知事の大村慎一氏が知事選への出馬を表明。鈴木康友・前浜松市長も出馬の検討を水面下で進めているとみられ、後継争いが早くも激しくなっている。

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「私は政治経験のない行政マンで一人の市民だ。ただ地方行政での経験を県政の立て直しや再構築に役立てたい」。大村氏は8日午前11時過ぎ、県庁正面玄関で報道陣に語り、知事選への立候補を表明した。きっかけは「経済界の皆さんから、県政の立て直しを頑張ってほしいと言われたこと」と述べた。

県政の課題としては川勝知事が水や環境への影響を懸念して着工を拒んできたリニア中央新幹線や防災対策、経済政策を挙げた。政策については改めて説明するとした。県庁内や自治体間の対話も深めたいとの認識を示した。特定の会派や地域にとらわれず、知事選には「オール静岡」で臨みたいとも話した。

大村氏は静岡県出身。東大経済学部卒業後、1987年に自治省(現総務省)に入り、2009年に県総務部長。10年から2年間、副知事に就いた。23年7月に総務省を退職。現在は静岡産業大学総合研究所で客員研究員を務める。

中部の金融機関幹部は大村氏の出馬について「川勝氏の辞職前から噂話程度には名前が出ており、特別驚きはない」と受け止める。「リニアを巡って国と県の関係が悪くなり、国に直接相談する企業も増えた。(総務官僚出身の)大村氏が知事になれば国とのパイプや関係修復を期待したい」と話す。

あるベテラン県議は大村氏について「党派色がなく、相乗りがしやすい」とみる一方、「県西部が納得するかどうかが今後の焦点」と指摘した。

その県西部を中心に擁立の声が高まるのが前浜松市長の鈴木康友氏だ。スズキの鈴木修相談役は大村氏が出馬表明する前の8日朝、報道陣に「ノーコメント」とした。県西部財界の幹部は「西部でいえば、彼が今一番(知事に)近い位置にいることは事実」と明かす。

別の幹部は「もし本当に本人が出るといえば、地元は応援する」と言明した。康友氏は財界や各会派と調整しつつ、来週早めにも出馬・不出馬含めて態度を固めるとみられる。川勝氏が辞意を示す直前に連絡を取り、後継を事実上打診した立憲民主党の渡辺周元防衛副大臣は現時点で態度を明らかにしていない。

浜松市の中野祐介市長は8日の定例記者会見で大村・康友両氏について「尊敬する先輩」と答えた。大村氏は「一緒に仕事をした間柄、大変立派な方」と評した。鈴木前市長については「浜松市と静岡県との関わりをよく知っている方。知事になられるのであれば、心強い」と述べた。

8日には川勝知事が10日にも県議会議長に辞職を申し出ることが明らかになり、後継知事選は異例の短期決戦となることが濃厚だ。関係者によると5月9日告示、同26日投開票という日程が有力となっている。この場合、告示までのわずか1カ月間で、各党は支援の有無やあり方、候補の検討などが必要になる。

大村氏は出馬を表明した足で、自民党静岡県連会長の城内実衆院議員のもとなどを訪れた。城内氏はその後の取材に対し、大村氏から口頭で支援を要請されたと明かしたが、後継候補について「政策や理念、熱意、人柄を議論して誰にするか決めていく」(城内氏)と述べるにとどめた。

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