去年5月、行政相談を受け付ける総務省の沖縄行政評価事務所に、知的障害者の支援を行う県内のNPO法人から、「選挙の時、どのような投票支援が受けられるのか具体的な情報提供がない」という相談がありました。
行政評価事務所が、県内すべての自治体の選挙管理委員会にアンケート調査を行ったところ、障害などの理由で候補者名などを書くことができない場合、投票所の担当者が代筆できる代理投票制度について、「周知していない」と答えた自治体がおよそ6割に上ったことがわかりました。
また、口頭で意思を伝えることが難しい人が、担当者とやりとりできる投票支援カードやコミュニケーションボードを「作成、用意していない」と答えた自治体はおよそ8割に上ったということです。
こうした結果や有識者からの意見を踏まえ、行政評価事務所はことし3月、県とすべての自治体の選挙管理委員会に対し、知的障害者などが受けられる投票支援について、積極的に伝えることが適切だとする通知を出しました。
総務省 沖縄行政評価事務所「前向きな取り組みに期待」
通知を出した総務省沖縄行政評価事務所の仲里均所長は「障害者団体から周知が不十分だという意見があったが、まさにそれを裏付けるような調査結果となった。今回の調査を公表することによって、選挙管理委員会が前向きに周知に取り組むことを期待している」と話していました。
知的障害者の家族でつくる団体「できるだけ早い周知を」
知的障害者の家族でつくる沖縄県手をつなぐ育成会の田中寛理事長は、今回のアンケート調査について「障害者に対する合理的配慮の意識が欠如をしている部分があるのではないかと、疑念を持ってしまう結果だ」と話しています。
そのうえで、田中理事長は6月には沖縄県議会議員選挙が行われることも踏まえ「私の周りでも代理投票制度についてほとんどの人が知らず、もし知っていれば、実際に投票に行く人もたくさん増えてくると思う。できるだけ早い周知をお願いしたいし、福祉部局などと連携し、行政全体で、取り組んでいってほしい」と求めていました。
沖縄 宜野湾市選管 広報誌で周知
通知を受けて、対応を行った自治体も出ています。
宜野湾市選挙管理委員会によりますと、市の広報誌に掲載した沖縄県議会議員選挙の情報の中で、期日前投票などとともに代理投票制度について、周知したということです。
広報誌には、「代理投票制度は、自筆にて投票用紙に候補者の名前が記入できない方に代わり、投票所の係員が本人の指示どおりに代筆する制度です。お困りの方は、お気軽にお声かけください」と書かれています。
市の選挙管理委員会は「通知を受けて、正しい情報をできるだけ多くの人に周知するために行った」と話しています。
アンケートの詳細
総務省沖縄行政評価事務所は、去年11月から12月にかけて、沖縄県内、41市町村の選挙管理委員会に、知的障害者の投票支援の状況について、書面でのアンケート調査を行いました。
代理投票制度の周知状況について尋ねたところ
▽「周知している」と答えたのは15の市町村で、およそ37%
▽「周知していない」と答えたのは26の市町村で、およそ63%でした。
「周知していない」と答えた理由については、「投票所において説明しているため」「必要性があまりないため」「国や県が行うものと思っているため」などとしています。
また、投票支援カードやコミュニケーションボードなどの意思確認のためのツールを作成、用意しているかどうか尋ねたところ
▽「作成、用意している」と答えたのは7つの市町村で、およそ17%
▽「作成、用意していない」と答えたのは34の市町村で、およそ83%となりました。
作成、用意していないと答えた理由については、「必要な支援は口頭で確認しているため」「どのように作成すればよいかわからないため」などとしています。
このほか、投票事務にあたる職員などに対し、投票支援についての事前説明を実施しているか尋ねたところ
▽「実施している」と答えたのは28の市町村で、およそ68%
▽「実施していない」と答えたのは13の市町村で、およそ32%でした。
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