シンクロンを率いるトーマス・オクスリーCEO=ロイター

【シリコンバレー=清水孝輔】脳波でコンピューターを操作する技術を開発する米新興シンクロンは8日、大規模な臨床試験(治験)に向けた患者の募集を始めたと発表した。脳に装置を埋め込んで信号を読み取る。同様の技術は米起業家のイーロン・マスク氏が率いる企業も手がけており、開発競争が激しくなっている。

シンクロンは2021年に米食品医薬品局(FDA)の認可を得て、6人の患者に脳波を読み取る装置を移植した。オーストラリアでも数人を対象とした試験を実施した。米国で新たに数十人規模の治験に向けた準備を進めており、オンラインで患者の募集を始めた。

今回の治験についてはまだFDAの認可を得られていない。同社の広報担当者は日本経済新聞の問い合わせに対し、治験の実施時期について「ノーコメントだが、まずは現在進行中の米国での試験を終える必要がある」と答えた。

脳波で機械を動かす技術はマスク氏が率いる米新興企業ニューラリンクも開発している。マスク氏は1月、最初の患者が同社の装置の埋め込みを受けたと明らかにした。シンクロンはニューラリンクの競合として注目されている。

両社は「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」と呼ぶ技術を開発している。小さな機器を脳に埋め込み、脳の神経細胞の信号を読み取る。体が不自由な人が考えるだけでコンピューターに文字を入力するといった活用をめざしている。

シンクロンには米アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏や米マイクロソフト共同創業者ビル・ゲイツ氏のファンドが投資している。ロイター通信によると、マスク氏もシンクロンに投資を持ちかけたことがあるという。

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