太陽光などの再生可能エネルギーの発電を一時的に止める「出力制御」が九州で急増している。2023年度の制御電力量は前年度比2・9倍の12億9000万キロワット時だった。平均的な家庭30万世帯の1年分の使用量に匹敵する電気が無駄になった計算だ。再生エネを有効に使おうと、昼間の電気代割引きや蓄電池の整備などが進むが規模は小さく、24年度も10億キロワット時の出力制御が見込まれている。
太陽光発電に適した土地が多い九州はメガソーラーなどの建設が進み、全国の太陽光発電の約2割を占めている。一方で再生エネの発電量は天候に左右される。送配電設備の故障を防ぐため、電力は需要量に合わせて供給する必要がある。晴れて発電量が増える日は、送配電会社が太陽光や風力の発電事業者に供給を止めるよう指示する。これが出力制御だ。
出力制御は他地域への送電や火力発電の出力抑制、蓄電池への充電などの対策を講じても電気が余りそうな時に起きる。エアコンの使用が低調な春や秋、企業の電力需要が下がる休日に起きやすい。
九州で電気が余る場合は本州など他地域への送電も可能だが、送電線の容量は限られている。また、稼働が天候に左右されず、頻繁な出力変更が難しいとされる原発が佐賀、鹿児島両県で稼働しており、他地域に比べて出力制御が起きやすい。
資源エネルギー庁によると、国内の本格的な出力制御は九州で18年度に初めて起きた。22年度の九州の制御電力量は4億5000万キロワット時だったが、23年度は12億9000万キロワット時に急増した。太陽光発電所が増加したのに加え、中四国や東北などでも出力制御が増えた。
西日本が晴れる時は中四国も電気が余る状況で、九州の電気を他地域に送りにくくなり、23年度の全国の制御電力量は18億9000万キロワット時になった。24年度は九州で10億キロワット時、全国で24億2000万キロワット時の出力制御が見込まれている。
天候に左右される再生エネは一定量の出力制御を伴うとされており、海外の再生エネ普及国でも発生している。一方で、再生エネ発電事業者の支援目的で電気代に上乗せされている賦課金や電気代高騰に不満を持つ人も多く、再生エネを「捨てる」出力制御への批判の声も大きい。
国などは広域送電網の容量拡大を目指すが、巨額の費用がかかり、整備には長期間を要する。余る電気を蓄電池に貯めたり、水の分解に使って水素として貯蔵する取り組みも進むが、まだまだ規模は小さい。九州電力は、晴天時の積極的な電力消費を促そうと、専用アプリを通してポイント還元に取り組んでいるが利用は一部にとどまっている。【久野洋】
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