世界自然遺産の北海道・知床で進められている携帯電話基地局の工事を巡り、専門家で組織する「知床世界自然遺産地域科学委員会」の臨時会合が6月7日に開かれる。29日、環境省への取材で判明した。国の天然記念物オジロワシの繁殖活動への影響の有無を確認する。会合は通常年2回で、臨時会合が開かれるのは異例だという。
2022年4月に発生した観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」沈没事故で、航路の大半が携帯電話の通信エリア外だったことを受け、総務省や地元自治体、KDDIなど携帯電話事業者4社は知床半島の4カ所に携帯電話基地局を新たに整備する計画を進めてきた。このうち知床岬に設置される基地局では、電源として太陽光パネル264枚で構成する発電施設(約7000平方メートル)を建設する。
環境省によると、科学委の委員から5月中旬、知床岬の建設予定地周辺でオジロワシの営巣状況を確認するよう要請があった。環境省職員や専門家が現場を確認したところ、予定地の100メートル以内のエリアにかつてオジロワシが繁殖に使っていた営巣木があった。
現在、繁殖に使われている木は確認できなかったが、予定地の近くでオジロワシが繁殖している場合は、建設工事に伴う騒音などの影響で子育てを放棄する可能性もあるという。
工事は5月上旬に開始されたが、委員からの指摘を受け、環境省と事業者は工事の見合わせを決めた。6月7日の科学委臨時会合で専門家の見解を聞き、繁殖に影響がないことが確認されるまで工事は中断するという。
知床半島での基地局建設を巡っては、伊藤信太郎環境相が17日の閣議後記者会見で「事業者には希少種に配慮して工事を実施するよう伝えているが、改めて徹底を求めたい」と話していた。【山口智】
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