道路脇に姿を現したツキノワグマ。親子とみられる=秋田県鹿角市で2022年8月8日、佐藤岳幸撮影

 環境省は16日、鳥獣保護法の「指定管理鳥獣」にクマを新たに指定したと発表した。昨年度のクマによる人身被害が過去最悪になったことを受けた対応で、都道府県による捕獲などを国が支援する。

 指定はニホンジカ、イノシシに続き3例目。個体数が減っている四国のツキノワグマは除外する。九州では既に絶滅しているため、北海道のヒグマと本州のツキノワグマが対象になる。

 これまで国がクマの捕獲事業を支援するのは、農作物被害の防止を目的とした場合のみだった。指定管理鳥獣に追加されたことで、今後は都道府県が策定する管理計画に基づく捕獲や生息数調査のための費用の一部を国が交付する。

道路を悠然と歩くヒグマの親子=北海道斜里町で2022年5月12日午前10時58分、貝塚太一撮影

 16日の閣議後の記者会見で、伊藤信太郎環境相は「クマと人の空間的なすみ分けを図ることが必要で、地域個体群の維持と被害防止対策を進める」と話した。

 環境省によると、昨年度のクマによる人身被害は198件、被害にあった人が219人(うち6人死亡)で、統計のある2006年度以降で最多だった。

 近年は人口減少や過疎化によって耕作放棄地が増え、森と人里の境界が不明瞭になったことなどで、クマが餌を求めて市街地に出没するケースが増えている。同省は放置された果樹の伐採など、人の生活圏への出没防止対策などにかかる費用を国が支援する枠組みも作る予定で、出没が増える秋に向けて準備を進めるとしている。【山口智】

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