JAXAの無人探査機「SLIM」は日本初の月面着陸に成功した=JAXA提供

文部科学省は5日、日本初の月面着陸に成功した無人探査機「SLIM(スリム)」の技術について、国内企業への移転が重要だとする認識を示した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が培った精密着陸技術を民間主導で発展させ、世界で激しさを増す月面開発を有利に進める狙いだ。

専門家会議「宇宙開発利用部会」の小委員会で、今後の月探査の考え方に関する素案を示した。素案は6月中をメドに正式にとりまとめる。

各国は月への輸送技術を競っているが、国内企業の力を利用して輸送機会を確保し、日本の宇宙開発を推進することが必要だという認識を示した。SLIMで実証した精密着陸技術や、月の夜を乗り越える「越夜」のノウハウを基に、今後の月探査について「民間主導で早期に実施できるよう検討が必要である」と明記した。

近年、月には水資源の存在が示唆されている。これを活用できれば、人類が活動する拠点や火星などに進出する足場となる可能性がある。将来の月面開発に向けた地質や資源調査などで世界各国が探査機を月面に送るなか、日本の国際競争力の強化が重要となっている。

JAXAのSLIMは1月、旧ソ連・米国・中国・インドに続く世界5カ国目の月面着陸に成功した。目標地点から半径100メートル以内への「ピンポイント着陸」に成功するのは世界初で、月の極域の限られた場所に存在するとされる水資源の探査で不可欠な技術とされる。

加えてSLIMはもともと極寒の月の夜に耐えられる設計をしていなかったが、着陸後、3度の越夜をした。なぜ機体の機能が維持されたのか分析することで、越夜の知見を蓄積できる可能性がある。

日本では宇宙スタートアップのispace(アイスペース)が月面着陸船を開発し、月面輸送サービスの構築を目指している。23年には月面着陸に挑み達成できなかったが、24年冬に着陸船を打ち上げ、再び着陸に挑む計画だ。世界では米国のインテュイティブ・マシンズが24年2月、民間企業として世界初の月面着陸に成功した。

文科省の月探査に関する素案では月着陸技術のほか、水資源の調査活動や米国主導の有人月面探査「アルテミス計画」における日本の参加領域についても記載した。

水資源ではインドと南極域を本格的に調べるプロジェクト「LUPEX(ルペックス)」について具体的な共同開発に早期に移行し、20年代半ばの打ち上げを実現する方針を示した。アルテミスではJAXAとトヨタ自動車が開発する月面探査車の本格的な開発の着手や、月測位システムの確立に向けた技術開発が盛り込まれた。

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