世界自然遺産・知床の知床岬で計画されている携帯電話基地局設置について、総事業費は約9億円で、このうち約4億4千万円が国の補助金でまかなわれることがわかった。4日の衆議院環境委員会で、松木謙公委員(立憲)の質問に総務省が答えた。具体的に予算規模が示されたのは初めて。

 このほか、委員会では「大規模なものは認めない」とする知床国立公園管理計画の規定との整合性について、伊藤信太郎環境相が「電気の売却目的の太陽光発電所が対象。今回は基地局の電源を確保するための付帯設備で必要最小限の規模。管理計画の方針とは矛盾していない」と説明した。

 事業の意義については「漁業者、その他の知床半島先端部の利用者などに対する安全確保が目的」とし、「その公益性を認めた上で、自然環境への影響を軽減することで、やむを得ず許可の判断をした」と話した。また総務省は、施工事業者が、工事の拠点となる知床半島の文吉湾にすでに資材搬入を進めていることも明かした。

 知床岬での工事は、「オジロワシの営巣地」とする研究者の指摘を受けて中断しており、再開は7日の知床世界自然遺産地域科学委員会での議論を踏まえて判断するという。

 一方、北海道自然保護協会(在田一則会長)は5日までに環境省に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会に、工事について作業指針で定められた通知をしたかどうかや、工事の図面類の公表、「大規模な新規工事にはあたらない」とする科学的根拠、太陽光パネルで火災が起きたときの対応などについて改めて問う質問状を送った。18日までの回答を求めている。在田会長は5日、道庁で記者会見を開き「我々としては絶対に反対である」と強調した。(奈良山雅俊、松尾一郎)

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