過剰な免疫反応を抑える「制御型T細胞」を、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製することに京都大などの研究グループが成功した。ヒトiPS細胞からの作製は世界初といい、実用化できれば移植医療における拒絶反応抑制などに有効な同細胞を大量作製することが可能になるとしている。論文は7日、米科学誌セル・ステムセルに掲載された。
体内の免疫細胞が過剰に活動して起きる自己免疫疾患では現在、免疫抑制剤による治療が中心。制御型T細胞を使った治療に注目が集まっているが、治療に使える分量を体外で作製することは難しい状況という。
研究グループはヒトiPS細胞から作製した免疫細胞「T細胞」に、制御型への誘導効果が知られている4種類の試薬を組み合わせて培養。作製された細胞と、がんなどを攻撃するT細胞を混ぜてさらに培養したところ、攻撃型T細胞の分裂回数が減って制御型T細胞と同様の免疫抑制効果が確認された。
さらに、免疫細胞が自身の臓器を攻撃する移植片対宿主病(GVHD)状態にしたマウスに、iPS細胞から作製したT細胞を移植した結果、免疫反応が抑えられて生存期間が延びた。
京都大iPS細胞研究所の金子新教授(免疫再生治療学)は「iPS細胞を使えば時間をかけずに大量の細胞を確保でき、自己免疫疾患を治療する薬剤の開発につながる」と話している。
京都大iPS細胞研究所=京都市左京区
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