世界自然遺産・知床の知床岬で進む携帯電話基地局の整備事業について、学者で作る知床世界自然遺産地域科学委員会(中村太士委員長)は7日、希少種オジロワシなどへの影響が強く懸念されるとして、工事を中断し、動植物への影響を再調査するよう環境省に求めた。環境省は関係省庁や事業者に理解を求める。
整備計画は2年前、知床沖で起きた小型観光船の沈没事故が発端。総務省が関係省庁や北海道、地元2町、通信事業4社からなる携帯電話エリア拡大に向けた推進会議を発足させ、昨年から知床半島に4基地局を新増設する計画を始めた。
4基地局のうち、知床半島先端部にある2基地局は今春着工。知床岬では、電源となる太陽光パネル設備(敷地約7千平方メートル)を含む計2万6千平方メートルの工事が動き出した。
その直後、猛禽(もうきん)類の研究者がオジロワシの繁殖地が近くにあることを科学委に指摘。環境省が7日に開いた臨時の科学委では、環境悪化による遺産登録の抹消を危惧する声が委員からあがった。工事は現在中断しているが、再調査の内容次第で中断が長引く可能性もある。
知床岬は国立公園の特別保護地区で遺産地域の「核心部」。利用が厳しく制限されて自然が守られてきただけに、全国の自然保護団体などから反対表明が相次いでいた。斜里町の午来(ごらい)昌(さかえ)元町長(87)も工事の停止と再検討の必要性を表明。計画撤回を求める署名運動を始めていた。(奈良山雅俊)
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