岐阜県恵那市の山間地にある飯地地区の175世帯に「スマートスピーカー」を設置する実証実験が始まった。増加する一人暮らしの高齢者を支えるためにデジタル技術を活用する試みという。

 「お薬はもう飲みましたか?」

 12日に行われた実証実験のデモンストレーション。飯地地区に住む高齢者宅のスマートスピーカーに文字と音声のメッセージが届き、その様子が飯地コミュニティセンターのスクリーンに映し出された。

 スマートスピーカーはモニターが付いた端末で、声だけでも操作できるのが特徴。実証実験では、この端末を希望する世帯に設置し、体調や服薬の確認など日々の見守りのほか、自治体からの災害情報なども届ける。利用者が希望すれば「1日応答が無い場合は、別居の家族に通知する」といった設定もできる。

 実験は日本郵便が提供する見守りサービスを活用し、市が実施する。事業費は約3300万円で、政府のデジタル田園都市国家構想の交付金を活用し、半額の補助を受けた。

 端末は希望すれば誰でも利用できるが、実験の大きな目的の一つが「一人暮らしの高齢者の見守り」だ。実験に参加する175世帯のうち28世帯が一人暮らしの高齢者だ。

 飯地地区は、恵那市中心部から車で約30分の山間地にある。約550人の住民のうち、65歳以上の高齢者が約45%を占めており、今後も一人暮らしの高齢者が増える可能性がある。

 飯地自治区協議会の纐纈佳恭会長は「地域課題はたくさんあるが、一番は高齢者のケアが困難になること。民生委員もなり手が少なく、独居の高齢者を支える者が少ない」とデジタル技術の活用に期待を寄せる。

 実験は2年後の3月末まで。恵那市は今後、オンライン診療など、サービスの拡充も検討していくという。(寺西哲生)

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