文部科学省は18日、巨大地震発生の可能性が指摘されている南海トラフ海域の海底で、地震や津波の観測システムの設置工事を終え、7月から試験運用に入ると発表した。秋にも本格運用をはじめてデータを公開し、気象庁の緊急地震速報や津波情報の伝達を迅速化する。

盛山正仁文部科学相がN-net沖合側系統の設置完了を明らかにした(18日、東京都千代田区)

盛山正仁文科相が18日の閣議後の記者会見で明らかにし、「将来的には地震のメカニズムの解明や少しでも早い検知につながっていく」と期待を寄せた。宮崎県沖から高知県沖にかけての南海トラフ海域に設置する海底地震観測網「N-net(エヌネット)」は、防災科学技術研究所が整備を進める。沖合側と沿岸側の2系統で構成する。

今回設置が完了したのは沖合側で、全長約900キロメートルの光ファイバーケーブルに18基の観測機器を取り付ける。地震や津波によって発生するケーブルのひずみを検知して、信号を高知県室戸市や宮崎県串間市の陸上局に伝える。

観測機器を海底に沈めてシステムを作り上げた=防災科学技術研究所提供

7月から防災科研が試験運用を始め、秋には本格運用に移行する。今年度中に沿岸側系統の整備を済ませてシステム全体の整備を終える。

陸上の地震観測地点では、海底で発生する地震の把握に時間がかかる課題があった。今回のシステムが完成すれば、海域で発生する地震を、陸上での観測に比べて最大約20秒早く検知できるという。津波は最大20分程度早く検知できるといい、早期の避難や自治体の防災対応などにつながる可能性がある。

南海トラフ地震の震度分布想定(図は現行想定。気象庁のホームページから)

政府の中央防災会議が2013年に示した南海トラフ巨大地震の想定では、静岡県から宮崎県にかけての一部地域で震度7、周辺でも広い範囲で震度6弱以上の強い揺れになる可能性がある。また、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の13都県に10メートル超の津波が押し寄せるとされる。想定発表から10年以上たったのを受け、政府は現在被害想定の見直しに取り組んでいる。

想定震源域は、気象庁が三重県から静岡県の沖合にかけて設置した「東南海ケーブル」や、紀伊半島沖から四国沖にかけて防災科研が運用している「DONET」がある。今回整備した宮崎県沖から高知県沖海域は空白域となっていた。

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