湧水と大気の温度差を利用して発電する装置。できた電力を使って湧水の温度を計測している=産業技術総合研究所提供

 地表に湧き出る地下水「湧水(ゆうすい)」に浸すだけで発電できる技術を世界で初めて開発したと、産業技術総合研究所(茨城県)などのチームが発表した。湧水と大気の温度差を使うのが特徴。水力発電のような水の流れが不要で、昼夜を問わず発電でき、電源がいらない計測器などに応用できるという。

 湧水の温度は気温の変化を受けにくく、昼夜や年間を通して約15度とほぼ一定で、夏は冷たく、冬は温かく感じる。

 チームは円柱形の銅棒の両端に、熱を吸収したり放出したりするヒートシンクをとりつけ、取り込んだ熱エネルギーを電気に変換する装置をつくった。片方を湧水中に、片方を大気中に置くと、温度差に応じて電気を起こせる仕組みだ。

 昼夜の寒暖差が激しく、冬は氷点下まで冷え込み、かつ湧水が豊富な長野県松本市で2022~23年にかけて実験したところ、実際に発電できることを確認。温度記録計などの機器を動かすこともできた。1日の発電量は、最も温度差が大きかった1月で平均14・5ミリワットだった。

 一般家庭の1日の電気使用量は6〜15キロワット時で、湧水発電の発電量はこれに比べるとごくわずかだ。チームの産総研物理計測標準研究部門の天谷(あまがい)康孝さんは「ボタン電池1個分ぐらいは蓄電できるので、水質管理装置などに使える。活用法を検討したい」と話した。

 成果は2日付のエネルギー関係の学術誌に掲載された。【菅沼舞】

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