人体に有害な高濃度のポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物を処理する「中間貯蔵・環境安全事業」(JESCO)の北海道事業所がある北海道室蘭市が21日、新たに西日本地域から出る高濃度PCB廃棄物の処理を、条件付きで受け入れることを決めた。国から要請を受け入れるもので、青山剛市長が同日の市議会議員協議会で表明した。

 国の要請は、今年3月末に北九州市や大阪市、豊田市(愛知県)の三つの処理施設が稼働を終えたことに伴うもの。環境省は北海道と室蘭市に対し、昨年12月と今月3日、3施設の処理終了に伴う受け入れ要請を2度行っていた。

 室蘭市は受け入れを決めた理由として▽処理施設が15年にわたり安全操業を続けている▽総じて市民に大きな反対がない▽施設の稼働率が低く、余力を持って処理が可能▽処理の終了期限の2026年3月末に変更がないと国が明言している――など7点を挙げている。

 受け入れの条件としては、安全確実な事業推進や情報発信の継続、地域産業の振興、事業終了後に取り組む資源循環型産業誘致に国が責任を持つなど5項目を求めた。今後、道にも市の方針を伝え、7月にも青山市長が環境省に出向いて合意文書を取り交わす計画だ。

 PCBはかつて変圧器(トランス)やコンデンサーの絶縁油などに使われた化学物質で、食品公害「カネミ油症」の原因物質の一つになった。事件を機に製造は中止されたが、特殊な廃棄方法が必要なため法律に基づいて国が全額出資するJESCOが無害化処理を進めている。室蘭市の施設では化学処理と、全国で唯一となった高温によるプラズマ処理ができるのが特徴。元々は道内からのPCB廃棄物に限定した処理を目的に設置が決まった。しかし、2008年の操業開始前に国側の要請で道内のほか、東北、北関東、甲信越、北陸の15県からの搬入を認めるなど最終的に対象地域は1都18県に拡大。当初は16年7月までとされていた操業期間も26年3月まで延長されるなど幾度も計画変更を受け入れてきた。東京電力福島第1原発事故で汚染されたPCBの処理も行った。

 同省は2月、市は5月に住民説明会や意見交換会を計6回、道の担当者を交えて開き、4月には市がホームページで意見も募った。(松本英仁)

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