交通量の多い米ハワイ州オアフ島の道路=2009年12月28日、AP

 米ハワイ州の若者たちが州政府を相手取り、運輸部門の脱炭素化に向けた行動を加速するよう求めた訴訟で20日、和解が成立した。政府や企業に気候変動対策の強化を迫る訴訟は世界的に増加しているが、同種の訴訟は最高裁まで争われるなど長期化するケースが多い。州政府によると和解例は初めてといい、原告側は「画期的」だと歓迎している。

 この裁判は、2022年6月、州の運輸部門の脱炭素化の遅れが州憲法に違反しているとして10代を含む若者13人が提訴した。

 州と原告側の発表によると、和解での合意では、子どもたちが「生命を維持できる気候」を享受する州憲法上の権利を認めた。そのうえで、州政府は45年までに全ての陸上交通と、海上と航空の輸送で脱炭素を実現するため、1年以内に具体的な計画を策定する。

 また、州交通局に気候変動への取り組みを助言する若者協議会を設けるほか、5年以内に歩道や自転車道を整備し、30年までに電気自動車の充電インフラ整備に少なくとも4000万ドル(約63億8800万円)を投じるとした。

 グリーン知事は「ハワイの若者たちが、自分たちの世代とこれから生まれてくる子どもたちのために、持続可能な未来をつくる目的で示した情熱は称賛に値する」と述べ、対策を先導する州としての「責任」を強調した。原告は声明で「次世代にハワイを残すための極めて重要な一歩で、世界に波及効果をもたらす」とアピールした。

 米国での気候変動対策を巡る訴訟としては、西部モンタナ州の事例がある。同州では23年8月、州政府が温室効果ガスの排出量を考慮せずに化石燃料の開発プロジェクトを認可したことは、環境権を明記した州憲法に違反するとの判決が出た。州側は控訴している。【ニューヨーク八田浩輔】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。