中国の無人月面探査機「嫦娥6号」が25日、月の裏側で採取した土などの試料と共に、中国内陸部・内モンゴル自治区に着陸した。国営新華社通信が伝えた。月の裏側の試料の持ち帰り(サンプルリターン)の成功は世界初で、月の成り立ちなどを探る重要な手がかりとして注目される。
米国との宇宙空間をめぐる競争が激しさを増す中、「宇宙強国」を掲げる習近平指導部が月面開発での先行をアピールする形となった。
サンプルリターンの成功を受け習近平国家主席は25日、「我が国の宇宙強国、科学技術強国としての水準を示す成果だ」と強調。「この勢いに乗って民族復興の偉業に新たな貢献を果たすことを期待する」と関係者を励ました。
嫦娥6号は5月3日、運搬ロケット「長征5号遥8」に搭載されて海南島の発射場から打ち上げられた。6月2日には月の裏側の南極に近い「エイトケン盆地」への着陸に成功。同4日には試料を搭載して離陸した上昇機が月の周回軌道で待機していた帰還機とドッキングし、地球帰還への最終段階に入っていた。
今回の探査は月の裏側で地球からの電波が届かないため、事前に打ち上げた通信衛星「鵲橋2号」が中継する形で作業を進めた。中国メディアによると、今回の月の裏側の探査では約2キロの試料を採取した。
習指導部は宇宙開発を国家戦略の柱と位置付け、急速に発展させてきた。2019年には「嫦娥4号」を世界で初めて月の裏側に軟着陸させることに成功。20年には「嫦娥5号」で米国、旧ソ連に次ぐ3カ国目として44年ぶりに月からのサンプルリターンを成功さるなど、着実に成果を積み重ねてきた。
中国は今後も無人探査機を打ち上げ、26年は月の南極地域の資源調査、28年は月面の資源を利用した実験を実施する予定。また30年までに月面に宇宙飛行士を送り込み35年までに月面基地の基礎となる研究ステーションを完成させる計画だ。
月面探査を巡っては、米国もアポロ計画以来、約半世紀ぶりに宇宙飛行士を月面に送る「アルテミス計画」を進めている。将来的には月を周回する軌道に宇宙ステーション「ゲートウェイ」や月面基地を建設する計画で、宇宙開発を巡る米中の競争は激しさを増している。【北京・岡崎英遠】
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