国内有数の稲作地帯・秋田県大潟村で、大手農機メーカー「クボタ」が稲わらからバイオ燃料を製造し、農業や家庭生活に利用する仕組み作りに取り組んでいる。メタンガスの発生源として脱炭素化の阻害要因となっている稲わらを、地産地消型のエネルギー資源として有効活用することを目指す。
「自然エネルギー100%」の村づくりを目指す大潟村は今年7月に「もみ殻」を利用したバイオマス地域熱供給システムを本格稼働させる。これと並ぶ村の計画の柱が「稲わらの利活用」。稲わら由来のバイオガス製造を構想していたクボタが2021年に名乗りを上げた。
環境省の委託を受けた実証実験が22~29年度の8年間の予定で進んでいる。今年3月には大潟村に建設した設備が稼働。村内で回収した稲わらを粉砕し、専用の発酵槽(高さ約12メートル、容量30立方メートル)からメタンを主成分とするバイオガスを抽出している。今年度中に発酵槽をもう1本導入し、1日当たり500キロの稲わらを処理する予定だ。
大潟村からは年間6万トンの稲わらが出る。クボタは26年度までに施設を拡張し、1日当たり5トン、年間約1800トンを処理する計画。30年度以降の事業化にあたっては最大で1日当たり100トン、年間約3・6万トンの利用を想定している。
実証実験では京都大が開発した触媒や、早稲田大が開発した反応プロセスを活用し、グリーン水素やグリーンLPG(プロパンガス)を製造する技術開発にも取り組む。こうした技術が確立されると、バイオ燃料による発電や熱供給で、農業や家庭での活用が可能になるという。
また、秋田県立大や大潟村とバイオガスを抽出した後の発酵液を肥料として再利用するための共同研究も並行している。
国内の稲わら排出量は年間約800万トン。このうち約650万トンが農地にすき込まれ、肥料となっている。一方で、温室効果が二酸化炭素の28倍に及ぶとされるメタンガスを大量に発生させており、農業由来の温室効果ガスの4割弱にあたるという。
クボタ水環境研究開発第一部の吉野大輔担当課長は実証実験の意義について「稲わら由来のメタンガスを大幅に削減することが可能で、エネルギー利用することにより国が50年を目標としているカーボンニュートラルに大きく貢献できる」と説明。「地球温暖化対策に貢献するお米としてブランド化して販売価格の向上を図るなど、農家にも還元できる」と話している。【高橋宗男】
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