人工赤血球の臨床試験について記者会見する奈良県立医大の教授ら(1日、奈良県橿原市)=共同

奈良県立医大は1日、2030年ごろまでの実用化を目指し、備蓄可能な人工赤血球の臨床試験(治験)を24年度中に始めると発表した。へき地医療や大規模災害時の負傷といった、通常の輸血が難しい場面での活用を想定する。

来年3月ごろから患者を募集し、安全性や有効性を確かめる。実用化が決まれば、安全性が確認されたものとしては世界初とみられる。

血液に含まれる成分のうち、赤血球は体内で酸素を運ぶ役割を果たす。献血で得られる赤血球の保存期間は低温管理で1カ月未満だが、今回開発した人工赤血球は常温で2年間保存できる。

採用した製法では血液型がないため、型を確かめる検査が不要となる。救急車での搬送中にも投与可能という。

治験では医療現場でニーズが多い800ミリリットルの輸血を念頭に、健康な成人に100〜400ミリリットルの人工赤血球の溶液を投与する。投与量や速度を4段階に分け、計16人に実施。400ミリリットルで副作用がないことが確かめられれば、有効性を検証する次の段階へと進む。

少子化の影響で献血者数が減り、医療現場での血液不足が予測されている。奈良県立医大はこれまで、保存期間切れのために廃棄されていた献血を利用し、ウイルスなどの感染源を取り除いた人工赤血球の開発に取り組んでいた。

酒井宏水教授は、いまだ安全性が保証された赤血球の代替物はないとし「必要性は大きい」と強調。輸血を補完することができるとしている。〔共同〕

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。